Chatwork Creator's Note

ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアとデザイナーのブログです。

ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアとデザイナーのブログです。

読者になる

『カモメになったペンギン』の社内読書会

こんにちは、Chatworkでエンジニアリングマネージャーをやっているid:daiksyです。

本記事はChatwork Product Day 2023応援記事です。

lp.chatwork.com

Chatworkでは、勉強熱心なメンバーがとても多く、有志が集まっていろいろな読書会が開催されています。

特に、ぼくも参加している『A Scrum Book』読書会などは毎週月曜日に30分ずつの開催で、もう1年近く続いています。

会社の同僚と一緒にやる読書会は、普段の仕事のコンテキストを共有した状態でディスカッションをすることができ、身近な課題に対して直接意見を交換することができるので、学習から実践までのリードタイムが短い、即効性のようなものが大きなメリットだと感じます。

この記事では、最近ぼくが参加した読書会の中から『カモメになったペンギン』読書会の様子を簡単にとりあげようと思います。

『カモメになったペンギン』とは?

www.diamond.co.jp

この読書会でとりあげた書籍『カモメになったペンギン』は、組織変革についてのさまざまな著作で知られるジョン・P・コッター教授による"Our Iceberg is Melting"の邦訳書です。

コッター教授は「組織変革を成功させる8段階のプロセス」を提唱していて、そのステップとは次のようなものです。

  • 危機意識を高める
    • 周囲の人々に変革の必要性とすぐに実行する重要性を理解させる
  • 変換推進チームをつくる
    • 経角を推し進めるには強力なチームが不可欠なことを認識する―それぞれ、リーダーシップ、信頼性、コミュニケーション、専門的知識、分析力、危機意識、に優れたメンバーが望ましい
  • 変革のビジョンと戦略を立てる
    • 将来がどのように変わるのか、その将来をどのように実現するのかを明確にする
  • 変革のビジョンを周知徹底する
    • 変革のビジョンと戦略について、なるべく多くの人の理解と賛同を得るようにする
  • 行動しやすい環境を整える
    • 障害はできるだけ取り除き、そのビジョンを実現したい人たちが行動しやすくする
  • 短期的な成果を生む
    • できるだけ早い時期に、目に見えるはっきりした成果を上げる
  • さらに変革を進める
    • ひとつ成功を収めたら、そのあとは変革をさらに推し進め、加速させる。そのビジョンが実現するまでは変革に次ぐ変革で、手綱を緩めてはならない
  • 新しい文化を築く
    • 新たな行動様式が過去の古い因習に置き換わるまでは、その新しいやり方を持続し、それが成果を上げていることを確認する

『カモメになったペンギン』ジョン・P・コッター/ホルガー・ラスゲバー:著 藤原和博:訳 野村辰寿:絵/ダイアモンド社/2007年

かつては、これらは「8ステップ」として順番に取り組む、とされていましたが、近年ではこれらは順番にではなく並行して取り組む「8アクセル」と呼びます。

『カモメになったペンギン』はこの8つの組織変革のプロセスをペンギンを主人公とした寓話によって解説しています。

ある日、1羽のペンギンが自分たちの住む氷山に大きな亀裂があることを発見しました。このままでは氷山は崩壊し、その上に住むペンギンの群れは全滅してしまいます。

氷山を発見したペンギンはただちに群れに危機を伝えますが、必ずしもその危機が群れ全体を動かすわけではありません。危機を実感せず、楽観的なペンギンもいます。

本書は、このように「変革の契機に直面した組織」をペンギンの群れに見立て、彼らが変革を成し遂げるまでの経緯を寓話仕立てで展開していきます。

寓話として語られることで、変革のステップがほどよく抽象化されているため、自分たちの組織にあてはめて考えることがしやすくなっています。

アクティブ・ブック・ダイアローグ

ここからは、具体的な読書会のやり方を紹介します。

『カモメになったペンギン』はそれほどページ数の多い本ではありませんが、1回の読書会ですべて読み切れる短さではありません。多くの読書会がそうであろうと思いますが、何回かに分割して開催することになります。

複数回に分けて1冊を読み通す形式の読書会では、よくあるパターンとして開催するごとに参加人数が減っていく、ということがあります。初回はみんなやる気があるので、大勢参加してくれるのですが、回を重ねるごとにだんだん面倒な気持ちになり、少しずつ足が遠のいてしまうのです。

特に、読書会開催日までに事前にその回でとりあげる予定の章を読んでおきましょう、というルールにすると、その面倒な気持ちに拍車がかかります。

ですので、ぼくが参加する読書会では、基本的に「事前準備は一切不要」という形にすることが多いです。こうすることで、回を重ねるごとに大きくなっていく、参加への面倒さが軽減するからです。

読書会を1時間枠で設定し、前半30分を黙読タイムとします。事前に準備をせず、読書会の中で本を読みます。そして後半30分で、読んだ箇所についてディスカッションをします。

『カモメになったペンギン』では、このスタイルに加えてさらに「アクティブ・ブック・ダイアローグ」の手法を取り入れました。

「アクティブ・ブック・ダイアローグ」は、さらに気軽な読書会のやり方です。どのくらい気軽かというと、1人の人が本のすべてを読む必要すらないという気軽さです。

「アクティブ・ブック・ダイアローグ」は、まず参加者それぞれがどの章を読むかを決めます。つまり複数の人で分担して本を読みます。

参加者は、自分が担当する章だけを読み、その要約を作成します。

最後に、順番にその要約を共有して、その要約の内容に対して対話します。

厳密に考えれば、途中の章だけを読む人は、その本の前の章までに書かれた前提を知らずに読むことになるので、深い理解には至らないかもしれません。しかし意外と要約を聞くと関連が頭の中で繋がっていくもので、面白さがあります。

特に今回取り上げた『カモメになったペンギン』は、ストーリ仕立ての寓話として筋が進みますから、分担して読む形式でも困ることはありませんでした。

今回ぼくたちは、全4回の開催で1冊を読み通すことができました。

参加者の感想

最後に、読書会の最後の回で集めた参加者の感想をいくつか抜粋して紹介します。

  • 実際のChatworkのコンテキストを踏まえて会話ができるので、同僚と読書会をすると楽しい
  • 読書会という形を取らなかったら、ぼくは物語だけ読んで深く考えなかったんじゃないかと思いました。
  • 事前に読まなくていいということと、要約だけでざっくりと把握できるので、最初は読む部分が少なくてモチベーションも保ちやすかった
  • 変革を進める上でのポイント(ハードル)が、みんなと話し合うことで実感を持って理解できた

ぜひ皆さんの職場での読書会開催の参考にしてみてください。