Chatwork Creator's Note

ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアとデザイナーのブログです。

ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアとデザイナーのブログです。

読者になる

チーム理解のためのストレングスファインダー®可視化手法

みなさま、お疲れ様です!開発人事の高瀬 (@Guvalif) です。

この記事は、Chatwork Advent Calendar 2023 における、7 日目の記事です。

qiita.com

今回は、新規にチームを立ち上げる際に、ストレングスファインダー® の結果を活用してみたお話です。


I. そもそも "ストレングスファインダー®" とは何か?

ストレングスファインダー®とは、個人の才能や強みを特定し、またその活かし方を示唆するツールです。心理学者の Donald Clifton によって体系化されたもので、才能や強みは 34 種類の資質 として表現されます。34 種類の資質には個人ごとに順位づけがあるため、組み合わせは  34! \fallingdotseq 3.0 \times 10^{38} にも及びます。

こうしたツールを好むか好まないかには個人差があると思いますが、個人的には以下の観点で有用性を見出しています:

  • 数千万人の実施実績に基づく、統計的な傾向データとしての性質を期待できること
  • 各資質の活かし方に関するアドバイスがあること

また、ストレングスファインダー®には認定コーチ資格が存在し、Chatwork 社内にも資格保持者が在籍していたりします 🙌

II. 同質性 vs 多様性

ストレングスファインダー®は個人の資質を知るためのものではありますが、チームビルディングにも効果的に用いることができると考えています。他者の資質を理解することで、協働にあたってのタスク配分やコミュニケーションをより円滑にできるであろうという考えからです。

ストレングスファインダー®の結果をどのようにチーム組成に反映するかには、大きく 2 つの方向性があるでしょう:

  1. 資質の同質性が高くなるように、チーム組成を行う
  2. 資質の多様性が高くなるように、チーム組成を行う

前者の場合は、同質性の高さに基づいてハイコンテキストなコミュニケーションが容易かもしれません。一方で、集団的に凝り固まった思考を導き、思わぬ見誤りを生むかもしれません。

後者の場合は、多様性の高さに基づいてお互いを相補的に活かすことが容易かもしれません。一方で、個々に散逸した思考を導き、意思決定を困難にするかもしれません。

ここでは一概にどちらが良いかは述べません。ですが、私個人としては「いろんな人がいる方がおもろいやん!」*1の精神で、後者を選択することが多いです。

というわけで、セクション III 以降では「いかに資質の多様性を推し量るか?」の観点で、可視化手法を論じたいと思います 🎨

III. ヒストグラムによる傾向把握

おそらく、複数人のストレングスファインダー®の結果を可視化しようと思った際に、真っ先に思い浮かぶ手法がこれでしょう。

チーム人数を  N 人として、頻度 0#F7F7F7,頻度 N を:

  • "実行力" の資質 → #7B2481
  • "影響力" の資質 → #E97200
  • "人間関係力" の資質 → #0070CD
  • "思考力" の資質 → #00945D

それぞれに割り当て、線形に色階調を補間することで、それっぽく可視化を行うことができます。

以下は、過去に自分が受け持ったチームの強み*2と弱み*3を、実際に可視化してみた例です:

IV. Jaccard 係数による空間マッピング

複数人のストレングスファインダー®の結果に対して、「誰が誰にどの程度似ているのか?」を考える際に、この手法は有用です。

まず、Jaccard 係数とは、2 つの集合  \mathbb{X} _ i  \mathbb{X} _ j に対して次の計算を行うものです:

 \displaystyle{
  J(\mathbb{X}_i, \mathbb{X}_j) = \frac{| \mathbb{X}_i \cap \mathbb{X}_j |}{| \mathbb{X}_i \cup \mathbb{X}_j |}
}

すなわち、 \mathbb{X} _ i  \mathbb{X} _ j の共通部分の大きさ に応じて 01 の値を取ります。(一致しないとき 0,一致するとき 1 になります)

ストレングスファインダー®においては、強みと弱みを構成する資質こそが気になる観点 です。順位づけの中間にあたる資質や、厳密な順番にはそこまで興味がありません。そのため、空間上にマッピングするにあたってもそれを考慮し、以下のように距離  d を定めます:

 \displaystyle{
  d(i, j) = 1 - \frac{1}{2} \{ J(\mathbb{S}_i, \mathbb{S}_j) + J(\mathbb{W}_i, \mathbb{W}_j) \}
}

ここで:

  •  i ,  j → 「どの程度似ているのか?」を判断したい 2 人 (の添字)
  •  \mathbb{S} _ *  * に対する強み (Strengths) の集合
  •  \mathbb{W} _ *  * に対する弱み (Weakness) の集合

として考えます。なんだか数式だと目がスベってしまうかもしれませんが、要するに:

  • 2 人の 強みと弱みがそれぞれ同程度 なら、距離  d 小さくなる
  • 2 人の 強みと弱みがそれぞれ異なる なら、距離  d 大きくなる

となるように式変形をしているだけです。(距離なので、素の Jaccard 係数と変化が逆になるようにしています)

距離を求めることができれば、空間上にも適切にマッピングができます。以下は、過去に自分が受け持ったチームを、実際に可視化してみた例です:

V. 差集合による固有な強みの抽出

最後に、複数人の中であっても個人の持つ唯一の強み に着目し、可視化を考えてみます。

考え方はシンプルで、ある個人  i の強み  \mathbb{S} _ i から、他の人たちも持つ強みを差し引いてしまえば良いです。これを数式で表せば以下となります:

 \displaystyle{
  unique(i) = \mathbb{S}_i - \bigcup_{j \neq i} \mathbb{S}_j
}

以下は、過去に自分が受け持ったチームを、実際に可視化してみた例です:

VI. まとめ

この記事では、ストレングスファインダー®の結果を用いて、いかにしてチームを把握するかを考えてみました。

特にセクション IV の可視化は気に入っていて、新たにチームメンバーを加える際には、空白の領域に当てはまる人を選んでみたいとも考えていました。結局自分がチームを大きく拡大することは無かった わけですが、またチームを組むことがあったら、同様な可視化を行なってみたいと考えています。

なお、この記事で紹介した手法はすべて Python でライブラリ化してあります。もし興味のある方がいましたら、後日 GitHub にも公開できたらと思うので、お気軽にご要望ください 🙂 (実際のところ、実施結果の PDF を配列などにするのが一番面倒ではありますが ...)

その他、チームに全力でコミットしたいという方向けにスクラムマスターの求人もオープンしていますので、ご興味のある方はぜひ弊社へ 💪

hrmos.co

*1:ご多分に漏れず、"個別化" が上位資質の一つです

*2:34 種類の資質の順位づけに対して、上位 5 つのこと

*3:34 種類の資質の順位づけに対して、下位 5 つのこと