こんにちは!モバイルアプリケーション開発部でスクラムマスターをしている折田 (@orimomo)です。 この記事は Chatwork Advent Calendar 2022 20日目の記事です🎄
みなさん、ふりかえり(レトロスペクティブ)やっていますか??
以前の記事でも書いた通り、私たちのチームでは毎週ふりかえりをおこなっており、改善サイクルや心理的安全性を生み出すイベントとして、特に大事にしています。
チームメンバーが飽きずに楽しめるように、また違った角度で物事を考えられるように、2022年も様々なふりかえりの手法に挑戦しました!
今回はその一部をご紹介しようと思います(備忘録も兼ねて)。もし良さそうなものがあれば取り入れてみていただけると嬉しいです。
手法を選ぶときに考えていること
手法の紹介に入る前に、「いつもどうやって手法を選んでいるの?」「選ぶのが難しいんだけどコツはあるの?」とチームメンバーに尋ねられることが増えてきたので、私なりに考えていることを記しておこうと思います。
とはいえ正解があるものでもないですし、入念に考えたからといって必ずうまくいくわけでもないのがふりかえりの奥深いところです。これも実験だと捉えて、まずは色々な手法にトライしてみてもらえると良いのかなと思います。
課題 or 感情、どちらにフォーカスするか
スプリント内で何かしらの問題点が見つかり、それについて議論の場を持ったほうが良さそうな場合は、課題にフォーカスしてみると解決策が見えてくるかもしれません(KPT
など)。
あるいはチーム内に何やら不穏な空気が流れていたり、モヤモヤしている人が多そうな雰囲気を感じたら、感情にフォーカスしてみるとなかなか言えなかった本音を聞けるかもしれません(Mad, Sad, Glad
など)。
現在(過去) or 未来、どちらを起点に考えるか
現在(過去)の課題から今後どうしていくのかについて考えることを「フォーキャスティング」、未来のあるべき姿から今どうすべきかついて考えることを「バックキャスティング」と言います。
頻度としてはフォーキャスティングを用いることのほうが多いように感じますが(KPT
など)、バックキャスティングを用いて未来のあるべき姿を強くイメージすることで、チームの停滞感・閉塞感の打破につながることもあると思います(ありたい姿
など)。フォーキャスティングばかりやってきてちょっと飽きたな...というときに気分転換としてやってみるのもおすすめです。
楽しさをどれくらい出したいか
チームの雰囲気がなんとなく暗かったり、最近真面目なふりかえりが多かったから気分を変えたいという場合は、イラスト多めで見た目にも楽しい手法を選ぶことが多いです(熱気球
やスピードカー
など)。時間が許すならみんなでイラストを描くところからスタートしたいですね。
チームで祝福したい出来事があったか
チームで担当したプロジェクトがリリースされたときなどは、成し遂げたことをみんなで祝えるような手法を意識して選ぶようにしています(Win Learn Try
など)。忙しいと忘れてしまいがちですが、一度立ち止まって自分たちに拍手を送ることは、チームで喜びを共有し、仕事の達成感・充実感を感じるうえで大事だと思っています。
2022年に試した手法たち
お気持ちからはじめるKPT
- お気持ち → Keep → Problem → Try の順で考える
- 馴染み深いKPTにお気持ちが入っていることで、普通にKPTをするよりちょっと楽しい
- お気持ちの表明がちょっとしたアイスブレイク + 出来事を思い出すきっかけにもなる
- 課題にもしっかりフォーカスできるため使い勝手が良い印象
Good Moyatto Next
- Good → Moyatto → Next の順で考える
- 「Moyatto」の代わりに「Bad」を使う手法もあるが、少し強い気がするので「Moyatto」のほうが個人的には好み
- 「課題」として表出するまでには至ってない「モヤッと」が溜まっていそうだと感じたときに◎
- シンプルなので時間がないときにも◎
Good Bad Fact Emo
- Goodな事実、Goodな気持ち、Badな事実、Badな気持ちをグラデーションをつけて表現できる
- 少し長めの時間をとって、思いついたところから書いてもらうようにしている
- 自由度が高く、感情も含めたチームの状態がいい感じにトレースされる点が好き
- ふりかえり時間は多めに確保しておくと吉
Win Learn Try
- Win → Learn → Try の順で考える
- 成し遂げたことをみんなでお祝いできるのが素敵。Winのパートは1つの付箋ごとにみんなで拍手している
- 問いが前向きなので、明るい雰囲気でふりかりができる
- チームに達成感を感じてほしいときに◎
- 課題へのフォーカスがないので、ネクストアクションは少し出づらい印象
Fun Done Learn
- 少し長めの時間をとって、思いついたところから考えて書いてもらうようにしている
- 問いが前向きなので、明るい雰囲気でふりかりができる
- 課題へのフォーカスがないので、ネクストアクションは少し出づらい印象
- 個人的にまだあまり使い所が掴めていない
Starfish
- 続けるもの → 減らすもの → やめるもの → 増やすもの → はじめるもの の順で考える
- 順を追って問いに答えることで、ひと味違ったアクションが思いつくかもしれない
- 問いが5つある点と見た目が特徴的なので、いつものふりかえりに飽きたときに◎
- 自由度はあまり高くないので少し窮屈も感じた(問いに対する答えがなかなか思いつかないときがあった)
Mad, Sad, Glad, Scared
- Mad、Sad、Gladに、Scared(不安だったこと)も加えて4項目でやってみた
- 考える順番は特になさそう
- 感情に全フォーカスする手法なので、チームの感情が動いていそうなときに◎
- メンバー同士で腹を割って話し、心理的安全性を作るための第一歩としても使える
学習マトリクス
- 良かったこと → 変えたいこと → 新しいアイデア → 感謝 の順で考える
- 感謝が入っているのが素敵で、少しエモい感じで終われる
- 課題にもしっかりフォーカスできるのでバランスが良い印象
- 4項目考える必要があるので、時間は多めにとっておくと吉
4Ls
- Liked → Learned → Lacked → Longed for の順で考える
- 「足りなかったもの」「欲しい物・望み」という珍しい項目があり、新しい切り口で考えられる
- 4項目考える必要があるので、時間は多めにとっておくと吉
5つのなぜ
- これ単体でやるというよりは、KPTなどと組み合わせて、根深そうな課題が見えてきたときにやると効果的
- 自分たちでも見えていなかったところに根本原因があったりして盛り上がった
- 腹落ちしたネクストアクションが作れる点がGood
- ロジカルな思考をする人が多いチームと相性が良さそう
熱気球
- 自分たちが熱気球に乗ってゴール(スプリントゴールやプロジェクトの完遂等)を目指していると考える
- 熱気球をより高く上昇させたもの → 熱気球の上昇を妨げたもの → 熱気球をより高く遠くに飛ばすためのアイデア の順で考える
- 熱気球のイラストがパッと目を引いて楽しいだけでなく、課題にも目を向けることができてバランスが良い印象
- 熱気球というメタファを用いることで想像力を刺激し、イノベーティブなアイデアを考えることができる
- 時間があればみんなでイラストを描いてからスタートできると楽しさが増す
スピードカー
- 熱気球とは違ったメタファとして。考え方は同様
- 車を加速させたもの(エンジン)→ 車を減速させたもの(パラシュート)→ 見えているリスク(崖)→ リスクを乗り越えるためのアイデア(橋)の順で考える
- 問いが多いので熱気球よりも時間がかかるが、少し先の未来にも目を向けられる点が良い
露天風呂
- 風呂(心や体が温まった出来事)→ 絶景(未来に目指したい・行きたい場所)の順で考える
- オフラインでふりかえりをする機会があり、ホワイトボードにみんなで絵を描いたのが楽しかった
- 未来についてゆったりぼんやり考えられるのが良い
- ただ、ネクストアクションは出しづらかった印象
ありたい姿
- チームのありたい姿 → チームの現状の姿 → ギャップを埋めるためのアクション の順で考える
- 典型的な「バックキャスティング」(未来のあるべき姿から今どうするべきかついて考える)の手法
- 他のメンバーがチームについてどう考えているのか知れて、目指す方向性も明確になるので、時々やってみると◎
アジャイルの車輪
- 「アジャイルの車輪」は、『SCRUMMASTER THE BOOK』(P125)に載っているツールで、アジャイルを適用する理由のうち重要なもので構成されている
- それぞれの項目についてどれくらいできているかを各自評価し、理由を話し合ったあと、ネクストアクションを考える
- これも「バックキャスティング」(本来のあるべき姿から今どうするべきかついて考える)の手法
- いつもと違った観点について思いを巡らすことができる
- チームが行き詰まっている停滞期や、目指す姿が見えなくなってしまっているときに◎
タックマンモデル
- 「タックマンモデル」は心理学者のブルース. W. タックマンが1965年に提唱した、チームビルディングにおける4つの発展段階のこと
- どんなチームでも成果を出すまでにだいたいこんな流れになる、というのをモデリングしたもの
- 参考記事
- チームが解散するタイミングで最後のふりかえりとして使ってみた(オリジナル)
- 新しいチームでの混乱期を恐れないでほしい旨も伝えたかった
- タックマンモデルの説明をした後、今のチームがどこに当てはまりそうか考える。そこからチームがうまくいっていた要因と、次のチームでも活かせそうなことを話し合い、最後は感謝で締める
- 現チームの良かった点を新しいチームに引き継ぐワークとしてとても良いと感じた
参考にしている書籍・サイト
- 『アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック』
- 「ふりかえりって何?」「なんでやらないといけないの?」「どうやるといいの?」「気をつけるポイントは?」など、ふりかえりのベースとなることは全てこの本から学びました🙏
- イラストも多くて大変読みやすいので、ふりかえりについて深掘ってみたいという方におすすめです
- ふりかえりカタログ
- 手法を選ぶときいつもお世話になっています🙏
- スライドを見てみるだけでも、ふりかえり手法の多さと奥深さを感じられると思います
- FunRetrospectives
- 手法探しに行き詰まったときに参考にさせてもらっています🙏