おひさしぶりです。サーバーサイド開発部PHPチームやまざきです。 クリーンなアーキテクチャはクリーンなペダリングができて初めてスタートラインにたてると思っています。
今回は、伊達と酔狂だけで自転車部をやっているやまざきがリモートワークしながら
- 太平洋から日本海までの本州縦貫 1215km
- 太平洋から瀬戸内海までの四国縦貫 364km
計1500km超のサイクリングをしてきた、誰にも得にならないようなことを共有しようと思います。 まあ、伊達と酔狂でやってますから仕方ないです。
- 自己紹介
- はじめに
- シーズン1 本州縦貫ライド
- シーズン2 四国縦貫ライド
- まとめ
自己紹介
おひさしぶりです、などと威勢良く口火を切りましたが、正味わたしのことを知っている人など皆無でしょうから軽く自己紹介をいたします。
- Chatwork に 2018年03月 入社。大阪で勤務。
- 個人的健康問題があり、2019年9月からフルリモート勤務。
- 入社してからは PHP システムを守る仕事メインで従事。
- かっこよくエンターキーを打鍵している Scala エンジニアを背中越しに眺めては、「ここは俺がくいとめる! お前は先に行け!」と心の中でつぶやくのが口癖。
- 好きな言葉は「えんと思うなら、やったらよろしいやん」。
はじめに
自転車部について
Chatwork の部活動は「趣味&教養」「運動」「食」「健康・生活」「心理学・カウンセリング・コーチング」「全社コミュニケーション」「プログラミング」などジャンルが様々あります。また健康的な活動を支援する制度「ヘルシー部活制度」なんてものもあります。
自転車部でもヘルシー部活制度を利用して Chatwork オリジナルサイクルジャージを作りたいなあと密かに思っています。
自転車トレーニング用のウェイトについて
部活にはいらないんですがね、トレーニングのためにあえて『おもし』を持っていきました。
- MacBook Pro (15-inch, 2018)
- iPad mini (第5世代)
- 15.6 インチモバイルディスプレイ (N-MD-IPS1506FHDR)
- 各種モバイルバッテリーとか周辺機器
自転車を100g軽量化するのには1万円かかるという俗説がありますが、まあ甲斐がないです。
部活動の拠点
サブスクリプション型住居サービスである、ADDress を1ヶ月間利用しました。定額で全国各地にある物件に住み放題というサービスで、 ADDress では1ヶ月 5 万円です。ただし、ADDress では1つの物件には最長で1週間での宿泊になります。
今回利用した物件は、静岡県南伊豆、神奈川県愛甲郡清川村、神奈川県鎌倉市、山梨県南巨摩郡南部町、群馬県吾妻郡長野原の5拠点です。途中、移動のつながりの問題でホテル泊もありましたが、ほとんどは ADDress の拠点で活動しました。
寝具にはコアラマットレス、枕はニトリのホテルスタイル枕を完備していて、ぐっすり快眠できましたし、家電も必要な物は一式そろっていて、光熱費も込み込み。個人的には価格以上に大満足でした。
表記について
- DAY
- 移動日を表します。
- SS
- スペシャルステージの略です。部活動のなかでも明示的にコース区間を設定して走行します。とくにタイムにこだわったりするわけはないですができるだけ楽しく完走します。
シーズン1 本州縦貫ライド
先に断っておきますが、いろいろトラブルはあったもののお恥ずかしながら無事に帰ってきましたのでご安心ください。
実はやまざきが途中で帰らぬ人となって、その遺稿を自転車部部長が代理投稿しているという超展開を期待していた方、申し訳ないです。やまざきは無事です。
2019年09月01日に大阪を出発し、同22日に帰阪するChatwork自転車部のなかで最長の旅でした。
DAY1 熱海から南伊豆
最初の逗留地は静岡県南伊豆町です。
新大阪から熱海までは、新幹線輪行でインチキをします。熱海からは、奥野ダム、大室山を経由して向かいます。
奥野ダムでダムカードをもらったのですが、守衛さんに「ダム天端道路は車両進入禁止ですので、あらかじめご了承ください」ととても丁寧に説明されてしまってなぜか動揺してしまい写真を撮り忘れました。残念です。今もこうしてダムカードを握りしめて泣いています。ダムカードがびしょびしょになってしまいました。また、もらいにいかないと(使命感)
大室山はこんもりしていて、ちょっとおいしそうでした。
そして初日から落車。フロントタイヤがざっくりパンクして制御不能に。内腿の軽い打ち身だけで済んだのは幸いでした。
しかし、ここ数年でも五本の指にはいる派手な落車に見舞われて自分がとても動揺していることが分かりました。予定より遅れはじめたこと、メカのダメージはなさそうだが、走ってみないと分からないこと。なんにせよ、直ぐにでもこぎ出したく衝動に駆られていました。こういう時に旅の仲間がいるのは本当に心強いのです。
初日ライドでのいきなりの落車だし、いったんムリせず落ち着こうではないか。後から痛みがでてくるとも限らないしここは安全策をとるほうがよいのでは? 輪行で下田までいくか?
いや、それは性急すぎる、もう少し様子を見て問題がありそうだったら輪行しよう。
なるほど、チャレンジとリスクのバランスを取るということだな。では、いつでも輪行での脱出が可能な伊豆急線路沿いを走るルートということでよろしいな?
いいですとも!
数十年来の長い付き合いであるイマジナリーフレンド*1との相談結果に基づき、計画していたルートを変更して、最短ルートでのゴールを目指すことにしました。対話のなかでうまれる一呼吸によって冷静さを取り戻せたのはとても大きいと感じました。持つべき物は友である。
これが功を奏したかどうかはしらんけど、なんとか逗留地にたどり着きました。途中で最短経路にリルートしたのに到着時刻は予定を1時間以上おしてしまっていました。
南伊豆の逗留地
南伊豆町の温泉付き一軒家の拠点に1週間ほどの滞在です。
源泉掛け流しでいつでも入れるという環境にすっかり虜になってしまいました。
リモートワークの作業スペースも十分にあります。居住性では自宅よりははるかに上です。5 日間フルタイムでリモートワークしましたが、なんら困ったこともなく快適に仕事ができました。仕事の合間のちょっとした休憩時間に縁側でぼんやりするのも素敵でした。
そして、地元のご馳走、ときどき自炊、そして朝昼晩、温泉の生活です。
ごく控えめにいって最高です。
SS1 石廊崎周遊
さて、本題のChatwork自転車部部活動に戻ります。
今回は太平洋から日本海を目指すことを目標にしています。始点は伊豆半島最南端、石廊崎に設定しました。
石廊崎までのコースは下賀茂温泉をスタートして海沿いに石廊崎へ、そこから山を越えて下賀茂温泉に戻ります。
Chatwork はフレックスタイム制となっていてコアタイムは10時から16時までです。コアタイムが過ぎ、キリの良いところで退勤。部活動開始です。9月にはいって日が短くはなってきていますが、なんとなるやろと軽い気持ちでライドに出発です。
海沿いは景色がよく信号も少ない快走路が続きます。最高です。
石廊崎に到着。階段の通路をシクロクロスばりに自転車を担いで突端へ。待っていたのは絶景でした。
日没まで景色を眺めていたかったのですが、帰路は山道のルートなので後ろ髪引かれる思いで帰路につきました。くやしい。
ひぐらしの鳴く山道をしっかりめにペダルを回して進みます。ゴールする頃には日も落ちていました。
だが、それもいい。
部活の後は、ゆっくりと温泉にはいって休養。ごく控えめにいって最高でした。
SS2 青野大師ダム周遊
南伊豆第2部活は、青野大師ダムの周回朝練にしました。
青野大師ダムのダムカードは訪問した写真をもって行けば下賀茂温泉の道の駅でもらえます。
自然いっぱいの快走路と心地よい負荷の勾配を経て青野大師ダムに到着。
サイクリングの基本は早発早着。勤務開始の10時までには余裕をもって帰れるよう計画しています。ここまでの道の状況、天候、気温、疲労状況をふりかえります。すべては計画通り。進んで良し。
青野大師ダムからはさらに山にはいってぐるりと一周する形で下賀茂温泉のほうに戻ります。しかし青野大師ダムから先は予想を大きく越えて、かなりのガレっぷり。
通行止めの案内はなかったのですが、倒木が道を遮っています。
まあバギー・ポッパー*2にとっては通行を妨げるようなものではありませんので、わざわざ車両通行止めにする必要はないのかもしれません。しかし、バギー・ポッパー基準で通行可能だとすると不安要素があります。この先に自転車では走破不可能な崩落や崖崩れがあれば引き返さなくてはなりません。引き返すのにも相当苦労しますし、時間が心配です。バギー・ポッパーでくれば良かったと後悔しても遅い。行くか、戻るか……
だいたいね、こんな荒れた林道を小径車でいくならね、ちゃんと準備しておかなくちゃいけないんですよ。それをね、ZWIFT*3っていうんですか? ペダル回すだけで体幹も鍛えられない実践向きじゃないトレーニングをしただけじゃあね、歯が立つわけないんですよ。春から走り込んでしっかり足腰を作っておけばね、ちょっとガレた道だからっていって尻込みなんてしないんですよ。
進むことを決断しました。最悪10時に間に合わなかったら、朝散歩していたら迷子になった犬を探している小さな子がいて、一緒に探してあげることにしたのだけど、実はご両親が犬の死を告げることができずに遠くに行ってしまったことにしていることに気づいてしまい、どうしたものかと考えていたのだけど、仕事の時間もあるので真実を子どもに伝えてしまったら泣き出してしまい、また新しいのを飼ったらいいじゃない、といったらもう完全に泣き止まなくなってしまい、そこに通りかかった警察の方に事情を伝えるとなぜか交番につれていかれてしまいました、これは某国の陰謀ですと無実を訴えたのですがなかなか解放されずホント不可抗力なんですとありのままをマネージャーに伝えようと決めました。ディテールをしっかり作り込んでおけばなかなか見破られないものです。
次善の策も用意した上で、あとは10時に間に合うようにペダルを回すだけです。ええぃ、ままよ! 自転車へのダメージを覚悟してずんずん進みます。落石、折れ枝、洗い越し... 自転車が傷つく時、わたしの防弾ガラスのハートもまた傷つくのです。完全な行*4です。
なんとか走破しましたが……まあよくパンクしませんでした。
なんとか10時の勤務開始期限には間に合いましたが、部活後のリフレッシュ温泉につかることはできませんでした。汗だくで疲れた身体を抱えて自分がいて、目の前には源泉掛け流し温泉がある。世の中一切の事情を差し置いて温泉の湧く湧くはとまらない。だがそれに触れることなど一切許されない。行です。
DAY2 南伊豆から神奈川県愛甲郡清川村
さて、南伊豆での温泉三昧&部活動&ときどきリモートワークも無事完了して土曜日からは移動日です。土曜日は神奈川県愛甲郡清川村に一泊、日曜日はそこから北鎌倉に向かいます。
そもそもタイヤがかなり損耗していたのですが、熱海、南伊豆経路でパンクしたことと、部活でガレた林道を突っ切ったこともありタイヤを交換しての万全のライドです。amazon のお急ぎ便は本当に助かります。
距離だけみれば琵琶湖を小回りしたときと変わらないですし、実績値としても不安はありません。ただし、そこに獲得標高 2000m がのっかってくるとなかなかのチャレンジです。さらに天気予報は雨、台風も近づいてきてます。
状況が悪ければ欲張らずに輪行する、と自分に言い聞かせて聞き分けの良いフリはしているものの、その実、ゼッタイ輪行なんてしたくない、目標達成できないじゃんというどっちつかずの最も危ない心理状況を腹に抱えたまま移動開始です。
最初のターニングポイントは下田駅です。雨が降り始めてもおかしくないような雲行きですがまだ耐えています。ここから天城越えで伊豆市方面に向かえば鉄道はありませんから、輪行で脱出する目はなくなります。安全に寄せるならば、東伊豆の海岸線を熱海方面に向かうことです。リスクとチャレンジのバランスがとれたルートのように思いますが、人はそれを甘えというんです。迷わずに、天城越えを選択しました。
途中、河津七滝ループ橋をのぼります。
バターになりそうです。
さて、天城越えに入ると一気に天気が悪くなります。旅を終えた後に気づいたのですが、自分は水属性なのではないか、という気づきがありました。今ではChatwork社内におけるカイナッツォ、あるいはキュアアクアのポジションに最も近いうちの1人が自分であると強く確信しております。
それを裏付けるように、天城越えではしとしと雨がふりはじめます。よりによってこの日は気温が低い。いったい、どんな業を背負っているのだろうと、自分に恥じ入るばかりです。ヒルクライムではレインウェアをきても発汗で浸水するし、発汗量を減らすために低負荷でゆるゆると登り続けるのもジリジリと体力を奪われていきます。とりあえず、ソフトシェルだけ羽織って風だけを防ぎ、同じペースで天城を登っていきます。本当は旧道を行きたかったのですが、まだ長い道のりがあるので、涙をのんでショートカットルートの新天城トンネルを選択しました。くやしいです。
無事伊豆市に到着すると天候は一気に回復。さらに熱海方面に抜けます。絶景です。
熱海まででると、あとは幹線道路を粛々と進みます。信号、標識確認(軽車両進入禁止の跨線橋のなんと多いことか)、路面変化、車両間隔……行の時間です。神経もすり減りますので 30 km間隔目安でコンビニ休憩をとります。トータル距離が 100 km越えてくるとどうしても食欲がなくなってしまうのですが、ムリして食べます。それもムリなら最終手段は甘い炭酸飲料です。
結果、目標予定時間で到着。臨機応変で出たとこ勝負のリルートで帳尻合わせできました。
本日の宿は趣のある古民家です。
実家のような安心感…余裕があったらここでもリモートワークしたかった。くやしいです。
DAY3 神奈川県愛甲郡清川村から神奈川県鎌倉市
一夜明けて、部活の続きです。快晴。引き続き移動日です。
清川村から北鎌倉に向かいます。ラジオからは強い台風が本州上陸する可能性が高いと盛んに注意を促しています。
今回は距離はそんなにないので、ゆっくり宮ヶ瀬ダムをポタリングしていこうと思っていたのですがキャンセル。早朝に出発して北鎌倉に早い内に入ることにしました。なんだろういつも、なにかに追われるようにライドしている気がします。わたしに染みついたカルマ*5がそうさせるのかもしれません。カルマを解放しなきゃあなりません。
清川村から降りた先は、基本幹線道路です。行です。海岸沿いは景色がきれいかなと思いましたが防砂林で海はほとんど見えません。
ちょっと風がでてきたぐらいでまだ台風の影響小さそうです。江ノ島にちょこっと寄り道です。
荒れる太平洋。
このとき、スマホが海水をかぶりました。塩分を拭き取りもせずに充電し続けたことでスマホは高級文鎮にメガ進化することになりました。おかげで今では秋の夜長に書道の錬成がはかどっております。つらいです。
雲行きが怪しくなってきたあたりで到着です。雨は降っていません。運が向いてきています。
こちらは綺麗な一軒家。
作業スペースにはプロジェクターもあります。
到着早々、海水を浴びた自転車を水洗いさせてもらいます。
そして、その夜、台風が直撃です。なぜでしょう、運が向いてきたというのは錯覚だったのでしょうか。それともわたしのカルマがそうさせるのでしょうか。本当に申し訳ない気持ちになります。
風雨がうるさくてなかなか寝付けず四苦八苦してやっとまどろんできたころ、ゲストの方が慌てている声が聞こえてきます。どうやら、ベランダの排水溝が詰まって、2階が水浸しになっています。その雨水がしみこんでさらに一階に雨漏りをかましているようです。
ゲストハウスの管理人さんとゲストさん、自分の3人が協力して水を拭き取ります。そんな午前3時。なんとか一段落。
ゲストの方がすっと麦茶を差し出してくれます。これは完全に交流慣れているプロの労いです。そういう振る舞いに接してほっこりする反面、コミュニケーション障害のわたしはすっかり萎縮してしまいます。午前4時。行に時間は関係ありません。
SS3 三浦半島周回
台風が過ぎ去ったが、大きすぎる爪痕を千葉県房総に残していきました。ほんの少し寝不足でのリモートワークとなりましたが、旅先のテンションで無事乗り切ります。
さらに翌日、早めに目がさめて突然のようにひらめきました。台風疲れと仕事も一段落。いますべきことは、台風が過ぎ去った後の海での行です。
さっそく器の大きいサーバーサイド開発部のマネージャーに相談です。急なお願いにもかかわらず、笑顔でオーケーをいただきました。チャット上では笑顔かどうかなんて分からないのですが、そう思わないと防弾ガラスのハートに傷がついてしまうのです。
午前休を使ってのスペシャル部活動のルートは三浦半島(ほぼ)一周ライドです。
道路に台風の影響はそれほどみられませんでした。多少、飛び砂で路面に砂が乗っている感じがありますが、走行に影響がでるほどではありませんでした。交通量は多めですが、道は良くまずまずのサイクリングという感じでしょうか。海沿いべったりのコースをポタリングしたら楽しそうだなあと思います。
第1エイドは長者ヶ崎。
第2エイドは折り返しとなる城ヶ島。城ヶ島大橋を渡って、城ヶ島灯台へ。
午前9時30分、しっかりペダルをまわして良い感じにお腹が空いたところでマグロ丼をいただく。まだお客さんのいない朝の食堂でがっつりいただくご飯は何か特別感を感じる。そしてライドしたときの味噌汁が最高にうまい。わたしなんかがこんなご馳走を頂いてよいのでしょうか。カルマがたまりそうです。
午後の勤務開始時間を考えるとあまりのんびりしていられませんので、食休みもほどほどに出発します。
第3エイドは三笠公園。
到着直前に、前輪がパンクしました。新品に交換したばかりなのについてないなあと思いましたが、雨のあとは路肩に異物がたまる傾向があるので、まああるあるか、なとど玄人ぶってチューブ交換したのですがどうも様子がおかしいです。タイヤに異物が刺さったあとがないのです。あんま慣れてないから、チューブかんでしまったかな。うーん、まあ、大丈夫か。
チューブ交換でロスした時間が大きいし、勤務開始時間までの残り時間を考えると無茶できません。三笠を観覧したかったのですが我慢。完全なる帰途につきます。くやしいです。
鎌倉周辺メシ
あまり外食という外食はしませんでしたが、ちょっとだけ。
鎌倉にぜんぜん関係ないですがフォアグラ丼が絶品でした。またカルマをひとつ貯めてしまった感が半端ないうまさです。
DAY4 北鎌倉から富士山須走
北鎌倉では三日ほど逗留し、翌日と翌々日は夏休み休暇をとって山梨県への移動日としました。ゴールは山梨県南巨摩郡南部町です。
行程としては1日目で富士山の麓、ふじあざみラインまで。そこで1泊。2日目は南部町までの移動としました。南部町ではリモートワークします。
1日目には SS を突っ込んで部活動もがんばっちゃいます。ふじあざみラインを登ります。
途中、コンビニ休憩してサイコンをとめっぱにしてしまったので、欠測区間がありますがまあ、気にしないでください。
前半は幹線道路を延々と走る行が続きます。足柄あたりから、ゆるい登りが始まって楽しいサイクリングの時間がはじまります。
そして陸自車両をよく見かけるようになると、そこは富士の麓、ふじあざみラインとなります。
SS4 ふじあざみライン入口から須走口五合目
富士山には3つのルートがあると、人づてに聞いたことがある。その中にも難易度があるとか。そしてなぜだろうか、自分はこのふじあざみラインが一番易しいヒルクライムだとなぜか思い込んでいました。なぜかは分からない。きっと、そのほうが自分にとって都合が良かったのだろう。
まあ、たかだか獲得標高1200足らず、南伊豆から清川村ルートを考えたら問題ないだろうと高をくくって臨みました。さらにいえば、先に宿に「おもし」を預けたのでチート状態です。登れないわけがないのです、というフラグは先に立てておいてのトライです。
今回の部活のなかでもメインのSSヒルクライムですので、足をつかずに登ろうという目標です。
スタート地点は直線の登りです。山道といえばグネグネが多いですから、この登りの直線はとても不思議な気分です。回しても回してもぜんぜん進んだ気がしません。勾配8%とサイクルコンピューターに表示されていますが、なんだかとても平坦な気がしてきます。ふじあざみライン序盤で手練れのクライマーの心に恐怖の種を植え付ける辛辣なメンタル攻撃だと自分が知るのはまだまだ先のことです。
直線の登りが終われば、つづら折りです。つづら折り、一見きつそうにみえますが、勾配がきついからこそつづら折りにして勾配を下げている、とも言えます。実際多くの峠がそうでしたし、これからはだらだら登っていくんだろうなと勝手に思いこんでいました。そう、これがふじあざみラインの第二形態。つづら折りはヘアピンだけきついというクライマーの先入観を利用した悪辣なメンタル攻撃です。ヘアピンはもちろんきついが、ヘアピン間をつなぐ登りもかなりの勾配です。休むところがぜんぜん無い。まだ中盤にさしかかろうかという段階で、禁断のフロントインナー、リア34丁*6を使うハメになってしまいました。完全にふじあざみラインの手の上で踊らされています。こちらに手の内はすべて出し切りました。引き出しは空っぽです。そこに単純な、それ故に強力な精神攻撃を仕掛けてきます。そう、ただただ勾配がきつい、そしていくらつづら折りを越えても変わらない。
このときクライマーはなぜこんなつらい思いをして登っているのか、富士急バスでのぼればいいじゃないか、などとふじあざみラインに挑んだそのこと自体を後悔しはじめます。心が切れそうになります。頭のなかではもう諦めようという声が聞こえますが、振り払います。PHPチームがいまめっちゃしんどい仕事している中、自分は身勝手にも夏休みなどという実際は取ってはいけない建前のお休み(クライマーの精神状態を表現しているだけで事実とは異なります)をとって坂を登らせてもらっているのに、自分だけ途中で諦めたなんてゼッタイに言えません。こんなしょうもないヒルクライムでも、負けられない戦いがある。そう、PHPチームのためにも! 酸欠になって錯乱しはじめます。もはや自分が何を考えているかすらわからないのです。正味、仕事のコトなんてぜんぜん関係ない話です。むしろ、働いているPHPチームだってそんなんしったこっちゃないのです。好きにしたらいいのです。でも、それほどにペダルを回し続けることに理由を求めたことなどあったでしょうか。呼吸が乱れが極限に達する。吸ってばかりでうまく吐き出せなくなる。勾配20%近い急登を越えます。ここまできつい勾配だもの、次のヘアピンカーブを越えたら、勾配は緩くなっているよね。少しは足が休められるよね。ペダルを回しているとは言えません、もはや体重をかけて押し込むといったほうが正しい。あのヘアピンを曲がったら勾配は緩くなる、わたし、頑張ったから、もういいよね…足を休めても…いいよね…
勾配20%近い急登を越えても勾配は緩くなりません。勾配16%。同じ勾配で続いています。そしてその途中にぽつんとバス停があります。狩休バス停。狩人だってここで休んだんだよね、この瞬間に張り詰めていた糸がぷっつりと切れるのです。これがふじあざみラインの甘いささやき。なんという悪質なやり口でしょう。結果……
完全に燃え尽きました…もう自転車に近づくのもイヤです……
ひとしきり休憩して、真っ白になった気持ちを抱えて何も考えられない。心の折れたクライマー、でもクライマーはクライマー。このまま下ろうとは一切思いません。再び登り始めます。
記憶にありませんが、とりあえずゴールした瞬間はもう登らなくていいだなと安心したことを覚えております。
ご親切に山小屋菊屋の店員さんが梅昆布茶を差し出してくれます。
ゼイゼイいいながら立ち話をしたら、一日で三往復する方もいるそうで本気のクライマーはどうかしちゃっているなと思ってしまいました。プロの行者、最高にかっこいいです。クライマーたちはいったいどんな業を背負ってこの世界に生まれ落ちたというのでしょうか。
そして、下山...
勾配がきつくて下りも気が抜けません。舗装が剥がれている部分もあって、小径車で突っ込んだらどこかにふっとんでいきます。
下の方まで降りてくると、なぜか悔しい気持ちがこみ上げてきます。次はゼッタイにリベンジしてやると心に深く刻みこみました。
宿について温泉にゆっくり浸かって思ったんですが、どうしてあれが富士山最弱のルートだと思い込んでいたのか、と考えてみたのです。もしかしてふじあざみラインに闇落ちさせられたクライマーたちが、他のクライマーも闇クライマーに引き込むためにウソの情報をインターネットで拡散させているのではないかという仮説です。この仮説は自分にとってはもっともな仮説に感じましたし、わたしも積極的にふじあざみラインがもっとも最弱なルートだということを発信していこうと心に誓ったのです。
ちなみに、登るときも登った後も富士山の山頂いっさい見えませんでした。ずっと曇り。まるで自分の心の天気のようでした。これがカルマであり、行ということです。
DAY5 富士山須走から山梨県南巨摩郡南部町
引き続き移動日です。次の逗留地である山梨県南巨摩郡南部町を目指します。昨日の今日だというのに、富士山に登ります。ぜんぜん、懲りてません。行です。
さらに天気は雨です。当然出発時にも富士山の山体は一切見えません。行です。
行です……
富士スカイライン入り口までの道のりはただただ雄大です。陸自の車両が何台も追い越していきます。しばらくすると、濃霧、雨に変わります。
静岡…霧…
「うっ、頭がっ…」
そしてフロントがパンク… なんか嫌な予感がします...
SS5 富士スカイライン
ふじあざみラインが11kmあまりで登り切るのに対して、こちらは27kmです。獲得標高に400mの差があるとはいえ、ふじあざみラインの凶悪さがわかりやすい比較となっております。
勾配が緩くなった分、距離は伸びています。27kmの登り坂というのもなかなかなものです。ただ、勾配がゆるければ足が全部持っていかれることもないし走りながらの休憩もできます。ただし天候は濃霧からの雨、最悪です。景色は一切変化なしです。べつに富士山でなくていい。行です。
途中、ドライブしている方が「がんばれー」と応援してくれます。うれしい。
途中、ライダーさんが追い越しざまにサムアップで応援してくれます。こちらもサムアップで返します。うれしい。
仕事では感じられることのない見返りや打算のない純粋な声援は本当に励みになります。ペダリングにも勇気が宿ります。
中等度の負荷が延々と続くのもかなりのつらさを感じました。ゴールしたものの霧……本当に登ったのか実感が湧かなかったのですが、2400m の表記を信用することにします。渋峠を越えて自転車での最高標高更新です。
一瞬雲がきれました。とりあえず、自分は雲より上のほうにいるのは分かった。ありがとう、高山ですからロマンスの神様あたりに感謝です……
雨、山、さむい…はよ、下山しよう…
再び濃霧の中を下山しはじめると、フロントの安定感が低い気がします。恐る恐る自転車をとめるとパンクしています。2つ目のスペアチューブで交換しますが……これ、あかんやつじゃ……
念入りにチューブ咬んでないことを確認して、交換した、そして異物がささっていないことを確認した……交換して1時間たたない間に再度パンクです。なんか別の問題が発生しています。
近くの自転車店を検索。電話確認して修理対応できるとのことでした。数百メートルおきに携帯ポンプで空気を補充しながらやっとのことで自転車店にたどり着きます。
さっそく修理点検をお願いすると
「異物はささってないし、リムも問題なさそう。うーむ、リムテープかもね。交換してみるとイイかも。リムテープもってないの? え? もってない?」
もう、ペコペコして申し訳ない気持ちになりながら、2本のチューブのパンク修理とリムテープの貼り替えを急遽お願いしました。
修理が終わると「がんばって」と送り出して頂きました。終始、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
修理で予定よりは遅れていますが、早発早着が基本で動いているロングライダーですもの、バッファを使い切ってもまだ慌てる時間ではありません。またプロの点検が入っていることで安心してペダルを踏み込んでいけるのも心理的にはプラスです。心機一転ががんがんペダルを回していきます。
そして予定より2時間おくれとなりましたが、目的に到着です。
古民家をリノベーションしたワーキングスペースとジムが併設されています。
夏休み明けとなる金曜日の1日だけ、こちらでリモートワークです。ジムにあるカフェスペースでお仕事。
休憩時間にはダンベルとベンチプレス。初めてやりましたが、けっこう頭がすっきりするし、頭を空っぽにできるので休憩には最適でした。今でも在宅ワークでダンベル休憩を取り入れています。
南部町界隈のメシ、うなぎ
カフェスペースでスタッフの方にカプチーノを入れてもらったり、近所でうなぎをたべたり。香ばしさと身の歯ごたえと。このうまさはまたカルマをひとつ貯めてしまったといって間違いありません。
DAY6 山梨県南巨摩郡南部町から群馬県吾妻郡長野原
さて、土曜日は移動日。このシリーズの部活動で最長の移動距離となります。南アルプス市、韮崎市、北杜市、佐久市、軽井沢を経由して群馬県まで移動します。
出発は午前6時、目標到着時刻午後5時。アップダウンが多少ある川沿いの道を気持ちよく走っていきます。今日のロングライドもいけそうだな、と思っていると、今度はリアタイヤがパンク…
あっ、これあかんやつじゃ……フロントが逝ったんだからリアも逝ってもおかしくありません。リアのリムテープは交換しておりません。
とりあえず、スペアチューブは補修して在庫十分。交換します。身延駅をこえて2km、再度、パンク。あかんやつです。駅近の自転車屋をさがします。国母駅まで輪行することを決意しました。
身延駅まで徒歩でもどって輪行準備。電車がくるまで1時間足らずの待ち時間。ChatworkのPHPエンジニアは転んでもただでは起き上がりません。むしろ、転んだなんてこれっぽちも思っていません。転んだとみせかけて、それはたまたまビーチフラッグの準備態勢に入っただけなのだと考えを切り替えられます。パンを買い食いしてカロリー補充、立ち上がりざまのスタートダッシュの準備は万端です。
電車に乗り込んで30分ほど。うとうとしているともう国母駅です。ワンマン電車の降り方はいつも緊張します。無人駅なので前から降りるんだなど指さし確認しながら降車するのですが、ちょっとまってください。網棚にのせた、荷物! わーぎゃーなどとわめき立てながら網棚の荷物を取りに戻ります。ワンマン電車、運転手さんに気づいてもらえれば、許してもらえるはず! すみません、すみません、わたしなんかですみません、生きててすみませんなどと言いながら、置き忘れていた荷物をピックアップしました。
もちろん、運転手さんも気づいてくださって待っていてくれたのだろうけど、定時運行を妨げ乗客のみなさまにも迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。つらいです。生きることとはすなわち、業です。
自転車を修理に持ち込んで、パンク修理とリムテームの張り替えをしてもらいます。修理が終わるころにはお昼です。輪行でインチキした分とあわせても、ちょっと目標距離に足りていません。まあ19時までにつけばいいかなあと、さっぱりと気持ちを切り替えて再出発します。鬱憤をはらすようにペダルをまわしまくります。
軽井沢に到着したころには夕方。ゴールが見えてきて心理的に余裕はでてきましたがここでペダルを緩めることはしません。ゴールするまでがライドです。
実走距離 155km、獲得標高 2000m。インチキしてショートカットしてしまいましたが、無事に到着です。
こちらも一軒家。今回は他にゲストの方もおらず1人で占有です。
晴れた日の見晴らしはとてもいいです。
SS6 長野原ー八ッ場ダムー品木ダムー草津温泉(サンデーライド)
前日の移動日を無事達成し、リカバリーがてらのダムポタ(ダムを巡るポタリング)です。
建設中の八ッ場ダムです。湛水試験前に行けたのはラッキーでした。湛水試験前のダムカードも無事入手。八ッ場ダムの湛水試験問題についてはわたしのような素人は黙っておきます。
とりあえず、焼きまんじゅうをはじめてぱくり。もっふりもぐもぐ系の食べ物であるとの気づきを得る。ちなみに、まんじゅうはこしあん派です。
八ッ場大橋ではバンジージャンプをやっていました。みんなこぞってジャンプしていました。かなり盛況でみなさん予約して飛ばれているようでした。
PHPチームに入れば、毎日が綱なしバンジーみたいにエキサイティングだし(体感には個人差があります)、さらにいえば、無料というかむしろお金がもらえるのにな、なんて思いながら、その場を後にしました。かくいうわたしも、この休日が終わればリモートで綱なしバンジージャンプということです。ワクワクします。デイリースクラムのあとは、「3, 2, 1, バンジー!」というかけ声、悪くないかも知れません。
八ッ場ダムから山に向かっていきます。品木ダムを目指します。
ダムは水を貯めておくためのものが多いですが、こちらは水質改善用のダムです。品木ダムの上流は強酸性の河川になっています。そこに石灰をつっこんで中和しています。その結果でた中和生成物を貯めておくためのダムです。このダムがあることで下流では清流となって魚も住めるようになるそうです。私も品木ダムのように、動物や人々の笑顔のために人知れず仕事をしているような存在になれたらいいなと思うほっこり系のダムでした。
品木ダムのダムカードは草津温泉近くの管理事務所でいただけるのですが、このときは門限の16時に間に合わず、後日ゲットとなりました。
ダムカードもらえなかった残念会を1人、閉じられた門の前で行い、西の河原露天風呂で疲れを癒やします。この露天風呂とにかく広いです。そして露天。休日であったこともあって人がたくさん。お湯はいいんですが、何かが自分のなかでしっくりきません。全裸の男たちがわらわらと巨大な水たまりに浸かっている様はどちらかというと猿の惑星のような印象を感じました。もしかして、ここは地球なのかなって、思ってしまいました。でも最終的にゆっくり浸かって疲れもとれました。そして、仁王立ちにになって両手を天に力強く衝きあげ、「オレは自由だー」って心の中で叫びました。自分の殻を破れた気がします。カルマの解放です。
SS7 長野原ー野反ダムー尻焼温泉ー草津温泉(祝日ライド)
部活に力を入れていきます。目標は野反ダム。序盤は昨日のライドと重複区間、途中からさらに山奥に向かいます。天気は曇り。
草津方面への国道292はゆるゆると登っていく快走区間。そこから分岐して野反湖方面へ。ここから勾配がきつくなり路面も荒れてきます。野反湖周辺がキャンプ場や登山口になっているので交通量は思いのほかあります。足の回復が万全でないので、しっかり回して一気に登り切ってしまう戦術を選択しました。
スタート地点が 600m の高所ですから、ちょっと登れば普段ではなかなか辿りつけない高見へ到達できます。これはよいインチキです。
さて、ここから野反湖を目指してさらに登っていきます。標高が上がるにしたがってガスがかかってきます。この感覚……知っている……いつだろう、もしかしてこれは前世の記憶ッ……いや、違いました。静岡、富士山周辺の真新しい記憶でした。
ガスはまもなくに雨に変わります。そういえば、とってつけた水属性の設定を思い出しました。
何も見えない。まるでわたしの心の天気のようです。なぜだろう、どうしてでしょう。どうしてわたしの心はこのような灰色に覆われてしまったのでしょう。どうしたら何もかもが希望に満ちていた子どもの頃のような心の風景に戻ることができるようでしょうか。どうしてわたしのこころはこんなに汚れてしまったのでしょうか。
とぼとぼとペダルを回し、ダムカードだけはしっかりといただきます。全身は汗と雨でしっかりと濡れています。気温 16 ℃。
さむいんだよ…帰りましょう。何もかもが希望にみちていたあの頃に。
ウェットな路面、寒さで手がかじかんでブレーキレバーの操作が危うい、でも速やかに降りていきたい。不思議なことですが、その場所ではスローペースで降りていくという合理的な選択が難しいのです。身体的不快は事故のリスクを正しく評価させるのを妨げます。事故ればゲームオーバー、最悪のケースではカルマ設定を引き継いだままの強くてニューゲームです。この不快な状態を数分でも短くできるならリスクは許容する、という間違った判断を理性で抑え込むのがなぜこれほどに困難なのか。これは行です。いままさに自分におかれている状況こそ、自身のカルマに依るモノだととらえなおし、この試練に打ち勝つことこそがカルマを解放するのだと覚悟し、観念します。わたしは負債よりも納期を優先してしまうことがある、恥ずかしい人間です。負債は少なくしなければならない、納期も守らねばならない、そうあるべきで、それこそがプログラマとしてのよりよい生なのだという強迫観念は自分を不幸に追い込んでいるだけなのです。自分はそんなこともできない惨めなヤツであるが、そんなあるがままの自分を捉え直します。それを虚飾で覆い隠す心理行動そのものが不合理なのです。身体感覚が思考に及ぼす悪影響を把握した。
寒さで気が動転しているようです。ソッコー下ります。
今日のライドの残りのミッションは草津で品木ダムのダムカードを回収してゴーホームすること。ですが、寒さで奥歯ガタガタいわせているので、新しいミッションが追加されました。温泉に入ることです。草津温泉は「ザ・観光地」の結果、気が動転してしまい正しく温泉に入ることはできませんでした。あえて草津温泉を外します。目標を尻焼温泉に定めます。
ハンドルを握るというよりブレーキレバーにしがみつく、という感じで下っていきます。ガスから抜けると路面はドライ。ひゃっはー。ノリノリで尻焼温泉に到着です。行とはなんだったのか?
立ち寄り湯のある星ヶ岡山荘にお邪魔しました。
一歩入っただけでもとてもよいふんいきのお宿で日帰りではなくて宿泊してみたくなるぐらいです。早速、温泉です。この時間帯はお一人お風呂にはいっていただけで、あとはずっと一人。川沿いの野天風呂を堪能です。野天は本当に自由になった気がします。肩まで浸かって疲れを癒やします。川の流れと晩夏のセミの鳴き声……もう、ここでゴールしたいです。ごく控えめにいって最高です。しかし、また時間を気にしてしまう自分がいます。ここから品木ダムの管理事務所までの山道が残っていて、さらに昨日は門限でゲットできていません。心地よい身体感覚もまた合理的な判断の妨げになります。行です。温泉を切り上げ、カルマを解放するために、ペダルをまわし山を越えてダムカードを手に入れるのです。カルマを解放しなきゃあなりません。
実際、のんびりしすぎました。そしてルートの難易度を見誤っていました。ルートを事前に作成していたわけではないので、ルートのアップダウンが把握できてないのです。距離はわかりますが、獲得標高は地形からだいたいの予測をするしかできません。そして完全にはずれました。しっかり山でした。完売売り切れの足と休めるダンシング*7(=休めない)を駆使して攻略していきます。回しても回しても進んだ感覚がしない。ぜんぜん乗れていません。この感覚は精神的にも追い込まれます。最後はケイデンス*8を上げます。心拍を代償に距離を稼ぐ。品木ダム水質管理所への到着は 15:30 すぎ。あぶないところだった...念願の品木ダムカードを入手。
あとは長野原に向かってずっと下っていくだけです。トータルとしてそこそこカルマが解放されたのではないかと、思っております。
SS8 万騎峠(朝練)
長野原リモートワークをして2日目。はやくもやさぐれた心、部活が必要でした。
自転車部の朝は早い。ここは山間、どこに向かっても山である。ほんの少し小雨。ウェット。あまり条件は良くない。しかし Chatwork の PHP チームエンジニアには唐突に1人になりたいときが必ずといってある。地図を確認して道幅の狭い峠に狙いを定めてゆっくりとペダルを回し始める。国道から細い道に入ると車通りもほとんど無くなる。平坦から勾配へ。そして道はさらに細い峠道へ。車両は一台だけすれ違っただけ。
蒼さを含んだ空気、呼吸音、チェーンの擦過音、葉擦れ、鳥のさえずり、虫の声……いっそ、この山で迷子になってずっとこの坂道を上り続けていたい、そう思えるほどの贅沢な静寂。
でも悲しいかな、坂道はいずれ終わる。だからこそ敬意をもって全力でペダルを回す。ゆるポタ系エンジニアは常にそうありたいと自分は思っています。
誰もいない峠を堪能する。呼吸が落ち着く。なぜ、このときスマホと時計を捨てなかったのか。時間をみると勤務開始時間の余裕はあまりない。そんなこと気づきたくはなかったのだけど。下界に向けてふたたびペダルを回し始める。くやしいです。
帰宅しリモートワークを開始です。
DAY7 群馬県吾妻郡長野原から乗鞍高原
長野原でのリモートワークも終わり、本州縦貫ライドでのリモートワークはここですべて終了です。あとは休日部活動をやりきって日本海を見ることです。
乗鞍岳を経由して富山に抜けて日本海を目指します。2泊3日の行程です。まずは長野原から乗鞍ヒルクライムのベースとする乗鞍高原までの移動です。
鳥居峠、青木峠の2つの峠を越えて、ゴールは乗鞍高原。幹線道路メイン。宿に着けばご褒美の温泉が待っています。
早朝に出発。
鳥居峠
青木峠
梓湖
安曇3ダムは時間的にパスします。くやしい。明日の乗鞍ヒルクライムを考慮して休息も計画内です。温泉に魂が惹かれたわけではありません。目標達成のためならダムカードも諦める、行です。
計画通り15時すぎに宿に到着。温泉にしっかり入って休養するのも明日の計画のためは必要なこと。夜ご飯もしっかり食べなければいけません。もちろん翌日朝の朝食もおひつのごはんをすべて食べきらなければなりませんでした。エネルギーがなければ山は登れません。これも行の一環です。ごく控えめにいって最高でした。
DAY8 乗鞍高原から富山県高岡市
今日は日本海にできるだけ近づく1日です。ですが、その前にスペシャルステージ乗鞍畳平ヒルクライム。乗鞍畳平からは下り基調の快走区間。一気に富山に抜けます。
懸念は天候です。朝はぎりぎり曇りですが予報は雨に向かっています。天気予報では乗鞍岳山頂(3026m)の気温は3℃です。山頂にいくわけではないが、畳平でも2702mですから準備が必要でした。
SS9 乗鞍高原ー乗鞍畳平ヒルクライム
戦術としては乗鞍畳平までは雨でも全力クライムで気温は気にしない、登り切ったところで全身着替える。バックパックにはすぐに着替え一式が取り出せるように準備します。
体温低下を防ぐために途中の休憩なしで一気に登り切る。指標として心拍160を維持です。
スタート地点が標高1500m。気温12℃。出発前に大音量で松任谷由実の「翳りゆく部屋」を聞いて集中力を高めます。コンディションを確かめるようにペダルを回し始める。足に少しだるさが残っているもののこちらは燃料満タン。
途中、20km先のゴールを見ることができました。ガス、雨、低温。覚悟ができる良い絶景です。ここまで来たらむしろ行の限界をこえてワクワクします。
ひたすらペダルを回します。まもなく、雨が降ってきました。
三本滝でマイカー規制のゲートを越えます。監視員の方が「お気を付けて!」とねぎらってくれます。本当に打算抜き、見返り抜きの声援というのは勇気づけられます。ここからはガスが濃くなってきます。景色はなくなります。マイカー規制でほとんど車は通らない、霧は一層こくなり見当識があやふやになってきます。ただ数メール先の灰色の虚無に向かってペダルを回し続けます。わたしたちがChatworkの巨大な負債に立ち向かっているときと一緒の光景です。果たして正しい道なのだろうか、進んでいいのだろうか、果たして本当に登っているのだろうか、こんなに苦しいのにもしかして下っているのではないか? 進もうと進もうと手応えは得られません。それでも自分の引いたルートを信じてペダルを回し続けます。ゼッタイに、負けられない戦いがある。途中で、道路工事の方々に声援をもらいます。打算抜き、見返り抜きの声援というのは涙が出るほどにうれしいものです。グネグネグネグネと登っていく。ちらっとのぞく景色に岩肌が多くなってきました。森林限界を越えた。標高は 2500m。つまり残り標高 200 ! ここまで90分。最後の追い込みです。クロスバイクの旅サイクリストさんがおられて、勇気づけられます。息も絶え絶えに「おはようございます、ゼィゼィ」と短くあいさつし、あとはまるでぜんぜん余裕ある風をよそおいます。ケイデンスを30上げて颯爽と追い越してみます。結果ひどく疲れてペースが乱れる。人間ってめんどくさい生き物だし、こうやってカルマを貯めていくのだろうなと思いました。最後はどうなってもいいやと躍起になってペダル回します。
なんとかSSゴールです。
濃霧すぎてあるはずのバスターミナルがどこにあるかもわかりません。その間にも体温が急激に低下。スマホがGPSを掴む間に手はかじかんできて操作もままなりません。闇雲に走りながらようやくバスターミナルをみつけました。着替えます。手が動かない、濡れた服が脱げない…着替え終わると、温かいものをもとめて食堂へ。うどん。最高。
食後に 2702m のエビデンスゲット。
「日本の舗装路最高地点に到達しよう」の実績がアンロックされ、行ランクがアップしました。
自転車通行止めの問題
雨は降っていてこのコンディション。念のため、バスターミナルの案内所で規制情報を確認すると岐阜県側は「自転車は通行止め」と聞き慣れない言葉が伝えられました。突然のことでパニックになって理解が追いつきません。曰く、
「自動車は良いが、自転車はだめだ。なぜなら濃霧だから」
山のことですので雨量などにより車両通行止めはいつも気にしています。出発時にも一般的な車両通行止め情報は仕入れていましたが、どうやら別の観点が抜けていたようでした。途方にくれてベンチに腰掛け、霧をずっと睨むしかありませんでした。正しい道だと思っていたのに、実際はそこで袋小路です。まるでChatworkのPHPシステムのようです。
最悪、岐阜県側を徒歩で下山するのはどうだろう。自転車を押して歩けば歩行者扱いのはず……でも、そんなの一悶着おきそうな予感しかしない。もっと良い方法はないものか。そういえば、ここはバスターミナル。路線バス、高速バスは一般的に輪行不可なのですがときどき輪行可のやつもあるのです。ダメ元で聞いてみるとなんと「いける」とのこと。よしと思って顔に出たのでしょうか、間髪入れずに言葉が続きます。きちんと袋に入っていないとだめ、ゼッタイ、と強く念押しされます。すごく前のめりに念押されたのであわわわとへたりこみそうになりました。だいじょうぶです、だいじょうぶです、きちんとした輪行袋もってきています。だいじょうぶですと、なんどもお伝えしたかったのですが、うまく呼吸があいませんでした。チャリだけに限らないとは思いますが一部、無茶される方もいるのでネガティブな体験に遭遇されたことがあるのかなと想像しました。自分もマナーアップしてイメージ悪くしないようにと心に誓いました。
バスのチケットを買うときも、問題が解消して心が軽くなったせいか、普段だったゼッタイしないような雑談してみようなどと勘違いをして「自転車の通行止めはよくあるんですか?」などと窓口に方に話しかけて見ると、岐阜県側で濃霧による自転車の車両規制はごく当たり前に行われているとのことで、長野県側はないとのこと。長野県側はいつか事故るなあれは、という熱を帯びた話しぶりです。あわわ、あわわわ、なんかわたしが怒られているような感じです。下りでバスを追い越す危ない走行をしている自転車があるようなのです。バス側がどれだけ安全運行を心がけても相手が無謀運転をしていれば事故回避に限界がありますし、事故が起こればさまざまな人に迷惑がかかりますから分かる話です。自分もマナーアップしてイメージ悪くしないようにと心に誓いました。
バス輪行はじめてでしたが、貨物室に固定できる類いのモノが一切無いということを知りました。山道ですから輪行袋にいれた自転車が貨物室内ピンボール状態になって最高得点をたたき出しても不思議はありません。もはや祈るしかありませんでした。ペアピンカーブで横Gがかかるたびに小さく呻きながら、高山ですからロマンスの神様あたりに深い祈りを捧げます。
岐阜県側の湯の平温泉で降車。貨物室をあけたらバラバラになった自転車でてくるのではないかとハラハラしていたのを覚えています。自転車は最初に設置した場所とはぜんぜん違う場所にいましたが、少なくとも目視レベルでの破損はなありませんでした。ありがとう、ロマンスの神様……次からは対策が必要だ……
湯の平温泉から富山県高岡市
小雨程度に天候は回復。標高1200mまで下って気温も12℃。なんとかなりそうです。
富山に向かうこのルートですが、個人的にすばらしいサイクリングルートでした。山間ですが、遠くを見晴らすポイントでは絶景が顔をのぞかせます。交通量は少ないとは言えませんが、下り基調の快走路は走っていてとても気持ち良いです。
止まることを惜しみ、補給を怠ったために後半バテてしまいましたが、無事高岡市に到着です。
DAY9 富山県高岡市から石川県金沢市
さて本州縦貫ライド、太平洋から日本海までの最終日となるフィナーレ観光ライドです。ちなみに、家に帰るまでが本当のライドです。
高岡市からは幹線道路での移動です。
石川県にはいると平野になります。みなさんもご存じだと思いますが、砂州が成長して海の一部を湖のようにせき止めたものを潟湖と呼びます。ここ河北潟が有名です。土砂の堆積によって平野になっているわけですね。
ずっと山の景色だったので頭がクラクラするぐらいにすごく平野です……
そしてついに大目標達成となる日本海です。
凪の日本海。
実際には坂道をのぼってそこから日本海が少しずつ見えてくるのですが、さすがにそのときはテンションが上がりきってしまって
「わぁ、海だー!」
などと言葉にならない言葉を叫んでいました。
西田幾多郎記念哲学館
本ライドの隠れミッションが、西田幾多郎記念哲学館の訪問です。モナドといったらライプニッツ*9ですよね。え? Scala ってなにそれ? おいしいの?
西洋哲学は授業で取り上げられるので大まかな概要などはなんとなく知識として持っていました。放送大学の哲学講義で西田哲学という単語がなんどか出てくることがありましたが、インプットする機会を作ることはできませんでした。今回はその良い機会です。
古今東西のさまざまな考え方をいかに統合するかを考えた西田哲学の方法論、考え方は、まさに様々なベストプラクティスの乱立という混乱の渦中にいる現代のエンジニアにとって何かのヒントになるのではないか、という思いがありました。特に Chatwork の PHP システムにおける負債についてミクロ的な視点での改善活動に心を砕いてきて、砕かれて、心を粉々にしてしまったエンジニアにとって、その砕かれた心を再構築可能な「大きな物語」を発見することはできないのだろうかという期待がありました。
システムとエンジニアチーム、プロダクトのユーザ、そのユーザを取り巻く社会……Chatwork というプロダクトは確固としてそこにあり続けるものではないのです。周囲の条件によって生成消滅する実体のないものです。それでも Chatwork というプロダクトを形作っているもの、あるいはそう見せているものとはなんでしょうか?
<私が PHP エンジニアとして Chatwork PHP システムを見るとき、Chatwork PHP システムも私をみている。>
突飛な考え方に見えるかもしれませんが、これは現在のエコシステムにおけるひとつの温かみのある側面とはいえないでしょうか? 主体と客体を分離して科学的に正しい分析をすることだけが、プロダクトを正しい形にすることではないという考えが大事になってきている気がします。
西田幾多郎記念哲学館でであった素敵な言葉を引用しておきます。(西田哲学に接することで、こういった引用もまた罪深いものだと感じます)
今日の哲学は思索によって経験的法則を論ずるのではない、概念によって事実を曲げようとするのではない、種々なる科学的知識の深い批評がその主なる職分の一である。種々の知識の依って立つ所の根底を明にして、それぞれの限界を定めるのである。
(中略)
いまだ研究もせない前にまず利益を知ろうとする好奇心ほど有害なものはないといって置きたい。
西田幾多郎「哲学のアポロジー」
非常時なればなるほど、我々は一面において落ちついて深く遠く考えねばならぬと思う。迂遠と思われる所にかえって真に顧慮すべきものがあるかも知れない。如何なる思想の傾向でも、長所もあれば、短所もあることを免れない。物そのものが根本的に誤っているというならとにかく、しからざる以上どこまでもその弊を矯正することに努力せねばならない。
西田幾多郎「知識の客観性」
ごまかしてはいけない、棄ててはいけない。そこを突破することによって、意外な思想の飛躍を遂げることができるのだから。
西田幾多郎
わたしは深く Chatwork を知らなければならないと、強い思いがわき上がってくる不思議な感覚を覚えました。
現場のエンジニアも(今日揶揄されるようなものとは違う)インテグレーターであるべきではないかという、個人的な発見がありました。また真の統合には根気強く深い知識が必要であり、そしてその真の総合はその場でのみ形になるような物ではないかと思いました。そこではベストプラクティスは存在しない。現時点での知識の限界に由来するたただただ正しいプラクティスしかないのかもしれない。そしてそのプラクティスですら、いま、そこでのみ正しいもので、明日には正しくないのかもしれない。
ちなみに、西田幾多郎記念哲学館の展示がとてもすばらしく、西田幾多郎を全くしらないわたしもですぐにその世界に引き込まれていきました。開館と同時に入ったのでわたし一人しかいなかったのですが、静寂の中でまるで西田幾多郎と直接対話しているような感覚になりました。興味のある方にはオススメしたいスポットです。
金沢散策
河北潟を眺めながらのゆるゆるライドで金沢に移動、長町武家屋敷を散策して旅は終了です。雨が降り出しそうなので兼六園はなくなく見送りです。
最後にちょっと贅沢なお寿司をたべようと背伸びしてみたんですが、やはり一貫あたりの単価が気になって味を覚えていません。もっと器の大きい人間になりたいです……
このトラウマを払拭するため、後日うまれてはじめて回らない寿司屋にいったのは蛇足です。
雨が降り始める前に撤収して、15時すぎのサンダーバードで帰阪。
サンダーバードに自転車を積み込みます。
ちょっと荒れた道を走らせすぎましたが、がんばってくれた相棒にも感謝です。
シーズン2 四国縦貫ライド
大阪に戻ると味気ない日々が待っていました。そして、思いました。
「そうだ、四国にいこう」
太平洋から日本海を達成したので、次は太平洋から瀬戸内海を目指します。ご期待ください。
DAY0 新大阪から徳島県三好市
まずは最初の逗留地である三好市にむかいます。日程の都合で電車移動です。朝早く仕事を開始して、コアタイム終了の16時に退勤。新大阪から岡山まで新幹線輪行、岡山から阿波池田駅までは特急で移動します。JR四国2700系気動車は9月28日からの運行だったので新型車両には乗車できず。くやしいです。
阿波池田の逗留地
ゲストハウスです。1週間お世話になります。
最高にのどかで、最高に静か。働いている場合ではありません。部活しなきゃ(使命感)。
SS1 黒沢湿地周遊(朝練)
9月の後半、日が落ちるのが早くなってきてメインの活動時間を朝に設定。それになんといっても山は朝です。四国ではじめての部活です。
距離は短いですが、四国の朝と自然を満喫するコースを設定しました。四国に軽くあいさつしておこうと思ったのですが、逆にお見舞いされる形になりました。そうです四国は絶景しかなかったのです。
どこにいっても終始景色です。いくらみても飽きません。川沿いは多少のアップダウンこそあれ、きつい勾配もない快走路。メインの道路を1つでも折れようなものならば、タイトな山道。自転車修行では夢のような行場です。
次に提示する画像は四国の「主要道路」のテンプレートとしてお使いすることができます。
深い山とうねうね道と適度な勾配です。どこにいってもこういう道に出会うことができます。行者にとってホームのような安心感。
朝、誰もいない黒沢湿地。
やはり働いている場合ではありませんでした。このまま山に入って迷子になってしまいたいです。
部活初日から四国には魅了されっぱなしでした。
SS2 大歩危ー若宮谷ダムー三縄ダム周遊(朝練)
前日の朝練に味をしめて、さらに大回りの周遊コースです。ダムカード成分多めです。余裕をもって 6:30 に出発です。
国道なのに行ではない快走路が続く国道32号。同じような景色に見えますが、ディテールは刻一刻と変化してあきることを知りません。
大歩危で折り返し、若宮谷ダムを経由して県道32号線でゴーホームです。
朝のダム訪問はいつでも格別の行です。
そして祖谷渓に沿って走る県道32号線へ。これまでの部活動でも上位にランクインするワクワクコースです。これぞ四国といううねうね道と常時絶景です。
最後に三縄ダムでダムカードをピックアップ。
ダムカードをもらうときの「いつもの儀式」があるのもよいダムです。
「どちらか来られましたか?」「大阪です」「遠いところからありがとうございます」
やりとりこそ淡々としておりますが、ダムを愛する(世間からみるとちょっとどうかしている)紳士同士がアイコンタクトを交わして通じ合う感じ、好きです。
山奥で誰に賞賛されるわけでもなくただじっとそこにあって人々の暮らしを守る、そんな存在に私もなれたらいいなと思う。
ダムカードを2枚手に入れうっきうきでゴーホーム。そして仕事のお時間。ほくほく気分でリモートワークできました。
阿波池田メシ
コンパクトにまとまった街で個人的にはとても住みやすいそうに感じました。
自転車部の部活の一環としてタンパク質をとるための焼肉活動したり。
ジビエをいただいたり。
阿波池田、良い行ができました。
DAY1 徳島県三好市から高知県高松
徳島リモートワークを終えて、週末。休日部活動に突入します。一度、高知にでて太平洋をゲットしたのち、瀬戸内海にむけて四国を縦貫ライドします。
1日目はダムを経由しつつ高知市街をゴールとしました。太平洋はまだ先です。
水属性の問題
ここまで根気強く読まれた行者のみなさんは既にご存じかと思いますが、わたしは水属性という設定でした。今回もその設定を存分に活かして適切な舞台をご用意いたしました。
終始、本降りライドです。本降りで100km走ったことないです。行です。そして本降りで100kmライドやったことなかろうと、ダムはキャンセルしません。むしろ雨だからこそのダムです。行です。
国道32号線、本降りになったとたん、走行は一気に困難なります。大型車、路肩の水たまり、滑りやすい路面。国道32号線は友達じゃなかったのか。行です。一時、どしゃぶり、もうレインウェアは関係ありません。最初の2時間は意味がありましたが、すっかり浸水。ゴアテックスのレインウェアといえど、長時間のライドから水の浸透を防ぎきることはできません。衣服が濡れてしまったことで休憩すると体温を持って行かれます。とにかく走り続けて天候の回復を待つか、そのままゴールしかありません。止まない雨はない? そんなことは言っていられません。コトにはタイミングというものがあり、それを逃したら一生挽回する機会はやってきません。ChatworkのPHPエンジニアはそのことをよく知っています。Chatworkでは、どしゃぶりの中でも尻込みせず前進していけるPHPエンジニアを募集しております。
休場ダム。
管理事務所が別にあるので今回はダムカードをゲットできませんが、写真をとって訪問履歴を残しておけば、いつでも取りに行けば良いのです。そうまた行けばいいのです。行です。
杉田ダム。
こちらは管理事務所に立ち寄ってしっかりダムカードゲットです。ダムカードを手渡してもらうときの紳士のアイコンタクトを忘れません。
しっかり雨の中を走ること70km。これまでにない疲労。心身両面からくる独特の疲労感です。車両間隔、路面コンディション、服や靴の不快感、寒さ。神経を使っているので、水分補給もわすれやすく、行動食の補給もすっかりお留守になっています。雨のロングライドは行である。そしてわたしのカルマもまた解放されていくのです。
時間的には余裕はありますが、ずぶぬれのまま休憩しても良い回復は見込めません。羊羹で応急的な補給をして一気に高知市街を目指します。
南国市あたりからは幹線道路になり四国らしからぬ複数車線道路となります。交通量の増加、轍の水たまり、信号……さらに行による徳が上昇します。
14時過ぎに到着。そして到着と同時に雨があがりました。なにも言うことはありません。これこそが良い行であったということです。つらいです。
DAY2 高知県高松から東予港(愛媛県西条市)
短いですが最終日。太平洋をゲットしてから、愛媛県の東予港を目指します。
途中離脱がなければ、部活動シリーズ通して初の100マイルライドです。獲得標高もしっかり2100m。良さそうな行です。
早朝に出発して桂浜をゲットします。海抜0メートル。獲得標高もわかりやすくなります。
市街地を抜けて山へ山へとペダルを回し続けます。いの町に入るまでは、徳の高い行が続きます。
そしていの町にはいると四国らしさを感じさせる景色が増えてきます。
SS3 UFOライン (高知県吾川郡いの町)
四国縦貫ライドを大目標に据えていますが、それと同じぐらい重要な目標がUFOラインのゲットです。四国絶景狩りのメインの一角です。
まあまあ、焦らなくても大丈夫です。安心してください。期待は裏切りません。ご期待ください。
四国らしいタイトな坂道を登っていきます。その先には絶景です。どうやらこんな風に絶景なようです。
実際はこんなんでしたが。
行です。
UFOライン入り口は曇りでした。ついにカルマが解放されたのだと意気揚々と登っていったのはいつの頃だったでしょうか。
標高があがってガスがかかり始めます。もちろん雨も降ってきます。
設定上、そうあるべきですし、そうでなければ受容者は納得しません。映画で拳銃が登場したときに、それは撃たれなければいけません。それがドラマツルギー*10というものです。カプコンのヘリコプターが飛べば落ちるのを期待する。わたしが山にのぼる。つまりこれもカルチャーとして定着したドラマツルギーなのです。
ガスがかかった山のトンネル。灯りはありません。
多くのメタファーに満ちています。Chatwork PHP エンジニアとして進むべき道は前にあります。それがどのような道なのは誰も照らし出してはくれません。さらにいえば、その道の先にある出口がどのようなものかすらわかりません。ただ、勇気を振り絞って、一歩一歩前を自力で照らし出し前進するしかないのです。出口からの景色がどうであれ、そこに立たなければ次の決断もくだせないのです。どんなに非情であろうとも、そこからでなければ正しいエンジニアリングは始められません。
今でも自分は本当にUFOラインに行ったのだろうかと確信を持てずにいます。ただ、確かにドラクエウォークで自宅を設置してきたのは間違いありません。そこにわたしはいたのです、きっと。
寒風山トンネルから東予港
あとは東予港に向かいます。東予港からはフェリーで帰阪です。理由のわからない疲労感がずっしりとのしかかってきています。あとは標高ゼロまで下るだけ、疲労感を抱えたまま山を下ります。
寒風山はトンネルは全長5kmに及ぶ長いトンネルです、高知側から愛媛側にむかって勾配3%でくだりです。逆に言うと、愛媛側から高知県側に向かうと延々と3%の登りが5km続きます。自転車でのトンネル走行の危うさはこれまで何度も経験してきましたので、高知県側からの突入がゼッタイ条件でした。すっと抜けてしまう方が安全ではないかという判断です。
寒風山トンネルに突入すると直線5km、出口は見えません。完璧なまでに単調3%の下り勾配。ペダルを回さずともすいすい進んでいきます。むしろブレーキかけないとスピードですぎます。追い越していく車はさらにすごいスピードです。このトンネル、やばい。トンネル内は明るさの問題もあって路面の変化に気づきにくいです。さらにトンネル内は舗装の継ぎ目などがおおく自転車がはねやすい。路肩に異物が転がっていることも多いので注意が必要です。何か異常があって避けようにもエスケープゾーンはありませんから、ちょっとしたことで大事故につながってしまいます。車体を押さえつけながら上半身を起こしてエアブレーキをかけながら下っていく。生きた心地のしない数分間です。
トンネルを抜けると天気は曇り。雨は上がっています。足は売り切れですが、下りか平坦メイン、ゆるゆる回し続けます。
愛媛県西条市に入りましたがフェリーの出航までには余裕があります。温泉で汗を流してから、堂々の東予港到着。
今回は贅沢にデラックスシングルをとってみました。自転車がそのまま持ち込めるのがウリの1つです。折りたたみ自転車なので手荷物として持ち込めばいろいろお得なのですが、なぜか次回の四国リベンジがあるような気がしてそのときはロードバイクかもしれないとも思い、せっかくだから快適さを試してやろうというチャレンジです。行です。
そしてこれがかなり快適です。準備不要で乗船できます。部屋にはスタンドを用意してくれています(スタンドは要電話予約だったのですが急遽用意していただきました)。自転車を手荷物として持ち込めば数千円から安くあげることはできますが、ロングライドの後で疲れたあとのことを考えれば検討の余地はあってもいいのかなというのが個人の感想です。
そのあとのことをよく覚えていないのですが、乗船してすぐ眠ってしまった気がします。目が覚めたら大阪南港でした。
下船、即出発。こんな贅沢が許されるのでしょうか。カルマが貯まりそうです。
また、カルマを解放するための行に出かけることになりそうです。
まとめ
今回はリモートワークで地理的な制約を突破して、普段ではなかなか行けない地方での部活動を実現することができました。
遠征先での長期リモートワークでもいつもどおり(というか、いつも以上に充実して)働けたのも良い成果だと思っています。成功の要因は今年の5月からやっている「リモートモブワーク(=リモートワーク×モブワーク)」というチームの働き方にあると思います。
いわゆる1人でタスクを進めるリモートワークでは孤独感、だらける/働き過ぎる、ヘルプを依頼するタイミングの難しさ、テキスト非同期コミュニケーションでの疲弊など効率的にチーム開発をするには課題が多くあります。
リモートモブワークでは、いつもの時間になれば Live にメンバーがあつまってきて、雑談などをしながら今日のやることを再確認して、あとは一般的なモブワークのやりかたで仕事を進めていきます。上記で上げた課題はほとんど解消されますし、モブワークの効用であるフロー効率も十分に享受することができます。
リモートワークは成熟した組織でなければ難しいといわれていますが、リモートモブワークであればそれほど導入は難しくないと感じました。大事なことは3つ。
- フェイストゥーフェイスでのペアプログラミング、モブワークを体験して同期的共同作業の勘所を掴んでおくこと。
- 四半期に一度は開発チームで期待のすりあわせ(ドラッカー風エクササイズ)をすること。
- リモートモブワークでの雑談を歓迎するマインド。
後の2つは心理的安全性を確保するためのプラクティスで、チーム開発での「ギクシャク」を減らすことができます。とくにリモートモブワークでは空気感やその人が発しているムード、オーラが伝わりませんから、気兼ねなく発言できる関係性を築いておくことはとても重要だと思っています。
このようにリモートモブワークという働き方に支えられて、2019年 リモートワークの旅は成功裏に終えることができました。
次は暖かくなって来た頃に日本のどこかでじっくりとペダルを回す旅に出かけたいな〜と思っています。
*1:空想の友人のこと。心理学上の現象名。
*2:バギー・ポッパー:ジャンプする車を操るファミコンのアクションゲーム。子どもの時分にはクリアできなかった。くやしい
*3:Zwift:バーチャルサイクリングゲーム。専用のローラー台を装着した自転車を漕ぐとゲーム内の自転車を進めることができる。
*4:ぎょう【行】仏教用語。悟りにいたるための実践。
*5:Karma:ごう【業】とも。仏教用語。人間の行う善悪の行為で、因果の元となる。
*6:ギアの歯数のこと。34Tは34本の歯がある軽いギア。前輪のインナーと合わせて最も軽い組み合わせとなる。
*7:自転車用語。いわゆる立ち漕ぎのこと。
*8:自転車用語。回転数のこと。これが高いほどたくさんペダルを回していることになる。
*9:ゴットフリート・ライプニッツ:17世紀ドイツの哲学者。著書に『モナドロジー』(1714年)など。
*10:ドイツ語で劇作術のこと。演劇理論の一種。