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ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアのブログです。

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ChatWorkのコーポレートフォントとその歴史を掘り下げる

はじめまして。デザイン部のかねこです。 すっかり桜も満開になり、毎日桜と東京タワーを眺めて良い心地になっている今日このごろです。いい季節ですね。

さて今回はChatWorkのデザインガイドラインに紐付いたお話です。デザインガイドラインとは?最初に分かりやすい例として1つご紹介します。

ChatWorkではロゴを自由にダウンロードしてお使いいただけるよう、 ダウンロードページ をご用意しています。 その中に「ロゴ利用ガイドライン」というドキュメントがあり、ChatWorkのロゴをご利用の際に守っていただきたいルールが書かれています。

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横並びのロゴのセーフティスペースや組み合わせのガイドライン(抜粋)

引用元:ChatWorkロゴ利用ガイドライン(PDF)

このように、色やフォント、レイアウトなど会社で設けているデザインのガイドラインがいくつかあります。

コーポレートフォント

その中の1つ「フォント」についてご紹介しようと思います。 ChatWorkではチャットワーク及びChatWork社のブランドを保持するため、コーポレートフォントを指定しています。

欧文(Webグラフィック文字/印刷)

  • Akzidenz Grotesk Light(Primary)
  • Adobe Caslon Pro Bold(Secondary)

和文(Webフォント(TypeSquare)/印刷)

  • UD新ゴNT Pro

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これらを使用してWebサイトや印刷物を制作しています。 統一したルールを元にデザインを行うことで、ユーザーの皆さんの目に何気なく入ってくるChatWork社としてのブランドイメージを形作っています。

欧文のAkzidenz Grotesk、和文のUD新ゴNT Proの歴史

メインとなる2つのフォントは、どのようにして誕生したのでしょうか?

改めて調べてみて、書体の歴史や時代背景を知るといかに長い間愛され現代のデザインに影響を与えているかを感じることが出来たので、お伝えしたいと思います!

Akzidenz Grotesk

アクチデンツ・グロテスクと読みます。

1898年にドイツ・ベルリンで誕生した古典的なグロテスク(サンセリフ)書体で、Berthold活字鋳造所 で制作された活字書体です。デザイナーが不明、など詳細が分からない点もあり未だに議論がされている100年以上も前の書体です。

誕生から50年以上経った1950年代、スイスで国際タイポグラフィー様式(スイス・スタイル)という「清潔感・可読性・客観性」を追求したグラフィック様式が発展します。そこで大人気になったのが Akzidenz Grotesk でした。その後"世界で一番有名な欧文書体"とも言われる HelveticaUnivers など「ネオ・グロテスク」と呼ばれる書体が登場したため、Akzidenz GroteskはHelveticaに影響を与えたと言われています。

Akzidenz GroteskとHelveticaの違い

とても近い印象ですが「Q」や「R」や数字の「2」「7」など、異なる点を見つけることができます。 f:id:cw-tomomi:20180330154538p:plain

Helveticaはスイス人デザイナーのマックス・ミーディンガーが作りスイスのハース鋳造所から1957年にNeue Haas Grotesque(新しいハースのグロテスク)として発表され、1960年にラテン語で「スイスの」を意味するHelveticaへと改称されました。Universも同じく1957年、スイス人デザイナーのアドリアン・フルティガーによって作られ、フランスのドベルニ・ペイニョ活字鋳造所から発表されました。どちらも今では Linotype社 がライセンスを持ち販売しています。

Akzidenz Groteskを含むこうしたサンセリフ書体の特徴は、「可読性が高く文字が認識しやすいこと」や「シンプルでニュートラル、普遍的な印象」を与えてくれる点です。

UD新ゴNT Pro

Akzidenz Groteskに替わって人気となったHelvaticaですが、日本で大きく展開に使われるきっかけとなったのは、1964年の東京オリンピックのグラフィックデザインだったそうです。

1970年代に入り、それまで明朝体がメインだった日本のグラフィック界も徐々にサンセリフ体を使ったデザインが増えてきました。デザイナーからもモダンなスタイルが表現できる書体を求められるようになり、日本のフォントメーカー・株式会社モリサワもモダンなサンセリフ体の開発を進めていきます。そうしてHelvaticaやUniversの流れを汲んだモダンサンセリフの延長線上で生まれたのが「新ゴ」というフォントです。

1990年にモリサワから「新ゴシック体」の名称で発売され、「新ゴ」と改称されました。ChatWorkが選んでいるのはその後発売されたUD(ユニバーサルデザイン)書体版のUD新ゴNT Proになります。 ユニバーサルデザイン書体とは、できるだけ多くの人が「わかりやすく」「読みやすく」「読み間違えにくい」ことを考えられ作られた書体で、文字の形状をシンプルに調整したり、アキを大きくして判別しやすくしたりといった丁寧な調整がされています。

新ゴとUD新ゴの違い

UDの方では文字一つ一つがスッキリした形になっています。アルファベットや数字は大きく違いますね。 f:id:cw-tomomi:20180330155801p:plain

ChatWorkでは「必要な情報を必要な人に」というコンセプトの元、読みやすさを考えられたUD書体であり正円を元に作られたロゴと比べて違和感のない形状であること、またAkzidenz Groteskと並べた時でも統一感のあるフォントであることを考えた上で、UD新ゴNT Proを選んでいます。

さいごに

この記事ではご紹介しきれませんが、各有名なフォントは大企業のロゴに使われていたり身近な公共施設で使われていて、意識をすると途端に街中が面白くなります。私自身もっと知識を身に着けて楽しみたいなと思っています。

この度多くの記事を参考にさせていただきました。 以下にご紹介させていただきます。

参考URL・書籍