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提案が伝わらないのは、内容の問題ではなく土台の問題かもしれない

こちらは kubell Advent Calendar 2025 シリーズ2 12月17日分の記事です。

EMの久村です。入社して1年3ヶ月が経ち、あっという間だなあと思っております。

最近会議で提案をしたとき、内容自体は筋が通っているはずなのに、なぜか反応が薄かったり、懸念点の指摘が多くなり、本質的な議論に至らなかったりすることがありました。

振り返ると、私は「何を変えるか」は伝えていたけれど、「なぜ今これを変えたいのか」「この場で何を決めたいのか」を十分に伝えていなかったように思います。 この経験から、提案をする際の「現状把握の共有」について考えたので、その内容を整理しようと思います。

「現状把握の共有」は何のためにあるのか

現状把握というと、「現在の物事の状態を正しく理解すること」というイメージがあると思います。売上や進捗率などの客観的な情報を集めることという捉え方です。 しかし、この件を考えていく中で、少し違う捉え方をするようになりました。

それは「現状把握の共有」とはコミュニケーションの土台を作る行為という捉え方です。

会議では、土台の上に議論を積み重ねて、最終的に「意思決定」というゴールを目指します。このとき、提案者と聞き手が同じ土台(前提)に立っていなければ、いくら議論の石を積んでも崩れてしまいますし、同じ場所にたどり着けません。 普段よくコミュニケーションを取っているチーム内では、この土台が自然と共有されていることが多いので、違和感が少なく進められていると思います。

しかし、普段あまり接点のない相手や、複数の関係者がいる場では、この土台を意識的に作る必要があります。 冒頭の私の提案がいまいち響かなかったのは、内容の問題というよりは、土台が揃っていなかったからだと考えました。

提案者が陥りやすい罠

ここで厄介なのは、提案者はその提案内容について一番詳しいということです。

自分の中では筋が通っている。背景も分かっている。なぜこれが必要かも理解している。 だからこそ、「相手はどこまで知っているか」「何を共有すれば同じ土台に立てるか」という視点が抜け落ちやすいのです。

私の場合も、ある会議体の運営を見直す提案をしたときに頭の中にはこんな文脈がありました。

  • 運営者として、参加者が多い中で議論が発散しがちなことへの困り感
  • 「もっと良い場にできるはず」「今のままでは参加者の時間を奪っている」という焦り
  • 主要な関係者とは事前に会話済みで、方向性は握れているという安心感

しかし、これらは私の頭の中にあっただけで、提案の場では十分に共有されていませんでした。 提案資料には「変更案」と「一部の変更理由」は書いてありました。でも、聞き手からすると、「なぜこの人がこれをやりたいのか」「今日この場で何を決めればいいのか」が見えなかったのだと思います。

結果として、聞き手は「何をどう判断すればいいのか分からない」状態になり、無反応か、懸念点を指摘するという反応になったのだと思います。

土台を作るために何を共有するか

この経験を踏まえて、提案時に共有すべき要素として、4つのレイヤーを意識するのが大事と考えました。

  1. 目的・意図 この提案で何を達成したいのか。この場をどういう状態で終わらせたいのか。
  2. 事実 数字や客観的な状態。主観を排除した情報。
  3. 解釈 その事実をどう意味づけているか。問題なのか、許容範囲なのか。
  4. 関心・優先度 何を重要と捉えているか。何を守りたいのか。何を避けたいのか。

特に「目的・意図」と「関心・優先度」は、提案者の頭の中で自明になっているからこそ、意識的に言語化しないと伝わりません。

ある提案を振り返る

以前、ある会議体の運営方法を見直す提案をしたことがあります。参加者を絞り、議論に集中できる場にしたいという提案でした。 この提案を、4つのレイヤーで振り返ってみます。

伝えていたこと:

  • 事実:参加者構成の変更案
  • 解釈:目的を短期の課題に絞ったので、それに合わせて参加者を見直す必要がある

伝えられていなかったこと:

  • 目的・意図:「今日この場で、変更について合意を取りたい」
  • 事実:特定の人しか発言しておらず、参加者全員の意見を聞き出せていなかった
  • 解釈:参加者が多い中で議論が発散しがちで、ファシリテーションの難しさを感じていた。参加者の満足度も低い状態にあるのではないか、もっと良い場にできるのではないかと思っていた
  • 関心・優先度:多少ハレーションがあっても、有意義な議論ができる場を最優先したい。

結果として、多くの参加者からは特に反応がなく、一部から懸念点が出るという形になりました。 聞き手からすると、「なぜこの人がこれを提案しているのか」「今日何を決めればいいのか」が見えなかったのだと思います。

もし最初に、「今日何を決めたいのか」「なぜ自分がこれを提案しているのか」「何を優先したいのか」を伝えていたら、議論の質は変わっていたかもしれません。

提案時に意識したいこと

ここまでの内容を踏まえて、今後提案する際に意識したいことを整理しました。

「自分だけが分かっている」前提で話す

提案者は一番詳しいからこそ、「これは言わなくても分かるだろう」と省略しがちです。聞き手は自分ほど文脈を持っていない、という前提に立って、意識的に共有する必要があります。

目的・意図を最初に明示する

「今日はまず課題認識を共有させてください」なのか、「この提案について合意をいただきたい」なのか。聞き手が「何を判断すればいいか」を分かる状態を作りたいです。

関心・優先度を言語化する

「一番避けたいのは〇〇です」「〇〇より△△を優先したいと考えています」。これがないと、聞き手は何を基準に判断していいか分からず、目についた懸念点を指摘することになってしまうでしょう。

目的の達成を優先する

自分の提案を通すことが目的ではなく、目的を達成することを優先することです。そうすれば、フィードバックも否定ではなくより良い提案として受け止められると思います。

聞き手の理解を確認する

「ここまでで、認識にズレがあれば教えてください」。など理解を確かめながら進めることも大切です。

まとめ

会議で提案をする際の「現状把握の共有」について、自分の失敗体験を振り返りながら整理しました。

  • 現状把握の共有は単なる情報提供ではなく、コミュニケーションの土台を作る行為
  • 提案者は一番詳しいからこそ、「相手はどこまで知っているか」が抜け落ちやすい
  • 目的・意図、事実、解釈、関心・優先度の4つのレイヤーを意識して共有する

提案がうまく伝わらないとき、内容の問題ではなく、土台の問題かもしれません。 過去の自分に伝えるなら、「何を変えるか」の前に「なぜ変えたいのか」「今日何を決めたいのか」を伝えよう、と言いたいですね。

もちろん、これを意識して実践していく中で、「もっとこうした方が良い」という改善点はきっと出てくるはずです。そうした気づきも大切にしながら、これからも「良い提案とは何か」について考え、アップデートしていきたいと思います。