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ビジネスチャット「Chatwork」のエンジニアとデザイナーのブログです。

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複雑化するデザイナーの役割や職域の整理とキャリアパスについて考えてみた

はじめまして、2021年7月にジョインしましたプロダクトデザイン部マネージャーのmotty(Yukiko Motegi - Wantedly Profile)です。東京から福岡へUターン移住したため、Chatworkに入社する以前からフルリモートで勤務しています。

(この記事は Chatwork AdventCalendar 2021 の12/24の記事です。他のメンバーの投稿も是非御覧ください!) qiita.com

20年近くUXerとして働いてきましたが、いやぁ目まぐるしいですね。日進月歩ですね。

最近副業のUXデザインコンサル業で、「デザイナーの募集要項どうしよう」とか、「若手デザイナーのキャリアパスどう設計しよう」とか、「そもそも◯◯デザイナーが多すぎて訳が分からない」とか、デザイナーという職種を取り巻く環境の複雑化に端を発したご相談をよく受けます。デザイナーのコミュニティやミートアップイベントでは「デザイナーのなんでも屋化」の話が毎回必ずといっていいほど出てきてしまいます。わかります、わたしも悩んでます。

ということで、今回はデザイナーの役割や求められるスキルセット、キャリアパスについて、これまでの実体験を踏まえながら考えてみたいと思います。

まずは自分のキャリアの棚卸し

わたしは00年代にこの業界に入り、ずっとデザイン周りの仕事をやってきました。当時の肩書きと実際におこなっていた業務内容を、現在よく使われる肩書きに置き換えて並べてみるとこのようになります(管理職業務は割愛)。

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キャリア棚卸し

見て取れることは、大きく2つ。

  • なんでも屋の典型
  • 年を追うごとに職域が絞られている

では、なぜ上記のようなことが起きるのでしょう。

なんでも屋はなぜ生まれるのか

ユーザーや生産対象物が複雑化していることに伴って「デザイン」に必要な業務が増えてしまった、という市場背景が一番大きな要因ですが、自分が勤めた会社やコンサルとして入っている会社など数十社を見てきた上で推察するに、なんでも屋が生まれてしまう組織にはいくつか共通点があるように思います。あくまでも所感ですが、考えられる原因や解決策を挙げます。

A. 非デザイナーによる組織づくり

非デザイナーがデザイナーの細かい職務内容を知らないことは致し方ないことです。境界線もわかりませんし、全部似た仕事に見えてしまうのではないでしょうか。しかし、同じ「デザイナー」と謳う職種であっても、必要なスキルやバックグラウンドは大きく異なります。そして、それらを同一人物が一気通貫で行うことは難易度激高なのです。職域を分けて複数人数で行うか、スーパーデザイナーで賄うか、の大きく二通りの手段を取る必要があります。

B. デザイナーリソースの不足

人が足りないから兼務するしかないという状況は、悲しいかな業界スタンダードになってしまっている気すらしますが、この課題は分業化とアウトソーシングの二段構えで解決可能です。ただし、コミュニケーションコストの増大や、リテイク技術という作ることとは少し異なるテクニックが必要になる点とのトレードオフが発生します。

C. メンバーの好奇心や向学心に任せた経営

この業界には、勉強熱心な人が本当に多いです。それは素晴らしいことですし、いつも見習わねばと変な汗をかいている側なのですが、本人の興味関心の赴くままに学習し、習得し、業務領域として取り込んでいくことを許す環境は、諸刃の剣でもあると感じることがあります。関連領域を面で拡げると同時に深度も考慮できる能力開発が必要だなぁというのは、好奇心のお陰で相当遠回りをしたわたしが遅れ馳せに得た教訓です。

職域を絞ったのはなぜなのか

これは正直なところ、ひとえに「絞らないと勉強が追いつかないから」に尽きます笑。わたしの所属するHCD-Netが人間中心設計(UXデザイン)プロセスに必要であると定義しているコンピタンスは以下です。

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HCD専門資格コンピタンス一覧

HCD専門資格コンピタンスマップ(2021年度).pdf - Google ドライブ

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人間中心デザイン基礎知識体系図

HCD(Human Centered Design)の考え方と基礎知識体系(概要版)

わたしは心理学畑出身なので心理学や統計学まわりの知識は多少あるものの、人間工学、行動経済学、デザイン、テック、マーケティング、ビジネス、業界知識・・・とアップデートしなければならない領域は枚挙に暇なしです。そして、UXデザインはデザイン業務の中の一部に過ぎません。わたしのキャパでは絞って学ばざるを得ないと判断しました。

とはいえ、得意であり興味ある領域について深く知っていく活動は単純に楽しいですし、そのスキルが仕事を通して誰かの役に立っていると実感できることはとても幸せです。絞って良かったなぁと今は思います。

デザイナーのキャリアパス

「なんでも屋化しているのに絞った方がいいって?一体どうすれば!?」 と思われる方もいらっしゃるかもしれません。 なんでも屋はしんどいというお話をしましたし、プロフェッショナルとしての価値を発揮するには絞って学習する必要があるとも書きました。が、わたし個人としては、なんでも屋は決して悪ではないと思っています。

複雑化している ≒ 可能性が拡がった ≠ 全部できなきゃダメ

世の中が複雑化することでユーザー理解が検証的な数値評価ではまかないきれない状況になったことが、デザイナーとしてかつてよりもたくさんの選択肢とキャリアの分岐を生み出したともいえます。それはわたしたちデザイナーの可能性の拡張に他なりません。つまり、なんでも屋ポジションとは「自分のコアコンピタンスを見つけるチャンス」でもあるのです。 かといって、なんでも屋がしんどいことには変わりありません。「全部できるわけないんだから得意なところをもっと伸ばそう!」と割り切る気持ちも同時に持っているといいのかもしれません。

「軸足」の置き場所を見つける

若いデザイナー諸氏から相談を受けたときには「まずは軸足見つけましょう」と答えています。 得意なこと、楽しいと思えること、やってみたいと思えること、関連図書の読破が早いジャンルなどなど・・これらはおそらくすでにポテンシャルの高い職域なのだと考えて差し支えないでしょう。まずは、そこに軸足を置いて研鑽し、そこから少しずつ上下左右を見渡してみるとコアコンピタンスを早期に絞れるかもしれません。 そして、この業界では周辺領域へのジョブチェンジは頻繁にあることなので、「あっ違うな」と思ったらサクッと肩書きを変えてしまえばいいのだと思います。

まとめ

ということで、今回棚卸し&分析をしてみて思ったことは以下です。

  • なんでも屋をやるのはしんどいがコアコンピタンス発見には役に立つ
  • より深い専門性を習得するために選択と集中は必要
  • Trial & Errorの精神で軸足を探そう

ちなみに、Chatworkのプロダクトデザイン部では、今現在全員が「UIデザイナー」という肩書きでなんでも屋をやっています。そして、今後は職域分割と得意分野の選択制を導入して、スキルの向上と理解の深化を目指す予定です。

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職域分割構想(案)

発展途上のチームですが、だからこそ実験的な組織運用も可能です。今ならなんでも屋も肩書き選択もできますし、取り扱っているプロダクトの難易度が高いが故に、習熟も捗るだろうと予想しています。 まだ自分のコアコンピタンスを見つけていない方にも、すでに絞り込んで道を極めようとしている方にも、たくさんの可能性をご提供できると思いますので、是非エントリーください!

recruit.chatwork.com